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2012年5月27日 (日)

Doppelganger

P1030126

人間には、その人に瓜二つの他人が何人か存在しているという。

「名古屋駅でかわすみ君を見かけた。」
学生時代に知人からそう言われることが度々あった。
けれどその見かけたという時間に自分は駅にはいなかったはずなので、
自分にそっくりな他人があの界隈に存在したことになる。

いわゆる「ドッペルゲンガー」というやつである。

第三者がある人物とそっくりな人間を目撃する現象をドイツ語でこう呼ぶ。
たかが他人の空似に御大層な名前を付けたものだと思うが、
この現象に日本語の訳語はたぶん存在していない。

シューベルトの歌曲集「白鳥の歌」にドッペルゲンガーという曲があるが、
この日本語のタイトルは「影法師」とされることが多い。
しかし、この訳ではドッペルゲンガーの不気味さを表現しきれていない、ということで、
そのまま「ドッペルゲンガー」と呼ばれることも多い。
歌詞はハイネによるもので、

ーー恋人の立ち去った家を夜中に訪れたところ、家の前で嘆いている男の黒い影が見える。
  月の光が射し込んで、男の顔が浮かび上がると、それは自分の顔であった。
  ドッペルゲンガーよ、なぜ自分の恋の苦悩を真似るのか……

ご存知の方も多いと思うが、
自分で自分のドッペルゲンガーを見るのは死の予兆だといわれている。
シューベルトのこの歌曲もピアノの重い和音が不気味に響く悲しげな曲で、
作曲家がこの後死んでいることを考えると、なかなかに恐ろしい。
(先日亡くなったフィッシャー・ディースカウのCDで聴いてます)

実際、暗殺されたリンカーン大統領や作家の芥川龍之介などは、
亡くなる前にこのドッペルゲンガーを見ていると言われる。
ネット上からの引用ですが、

  芥川はある座談会で、ドッペルゲンガーの経験があるかとの問いに対して、「あります。 私は二重人格は一度は帝劇に、一度は銀座に現れました」と答え、錯覚か人違いではな いかとの問いに対しては、「そういって了えば一番解決がつき易いですがね、なかなか そう言い切れない事があるのです」といっている。

                 河合隼雄著「コンプレックス (岩波新書)」(P51)

さて、そんなドッペルゲンガー現象であるが、
自分の場合は後日談がある。

何年か前のはなし、友達と飲もうということになって大宮駅で待ち合わせをした。
例の「まめの木」の下のあたりである。
夕刻なので駅は人でごった返し、まめの木のあたりも若い人が何人も立って
携帯をいじっていた。
自分は少し早めに来て、友人たちを待っていたのだが、
待ち合わせの時間直前になって友人の一人から携帯に連絡が入った。

「かわすみ君、ひょっとして痩せた?」

いや、痩せてないし、と思って話を聞くと、
今目の前に「かわすみ君」そっくりなのがいる、という。
しばらく会っていなかったので、本人かどうかわからないから携帯を入れてみたとのこと。

ドッペルゲンガーの出現である。
しかも自分はすぐ近くにいて、その場に駆けつけることができる。
(うわ、俺、死んじゃう!)
不気味な感覚に戸惑いを覚えつつも、待てよ、と思う。

なんでドッペルゲンガーが痩せてるんだ?

そいつは明らかな「他人の空似」だろうと考えて、友人と合流し、
「ドッペルゲンガー」呼ばわりされている人物を確認する。

そこには少しばかり昔の自分と似た感じの青年が立っていた。
たしかに、雰囲気は近いものがあるが、本人である自分に言わせれば、

全然似てない!

と怒鳴りたくなるくらい、別人だった。
ひょっとして友人は冗談でやっているのかなとも勘ぐったが、
その後の飲み会での会話でも
「本当にそっくりだった」
と話しているので、たぶん、マジにそう思っているのであろう。

かくて自分は現在まで死ぬこともなく生き延びているのだけど、
芥川龍之介のような鬼才然とした風貌ならともかく、
自分のような普通レベルの人間のドッペルゲンガーなんて、
そこらじゅう掃いて捨てるほど歩き回ってるんだろうなと
考えるようになった。
たぶん、いつか本物のドッペルゲンガーに遭遇したとしても、
自分はそれと気づかずすれ違うだけであろう。
ドッペルゲンガーに遭遇できるのは
選ばれた強烈な個性を持った人間にのみ許される特権なんじゃないだろうか。


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