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2012年8月 5日 (日)

ノリのいい文章

文章というのは書いているとどんどん勢いがついてきて、
しまいにグルーヴしながらテンションが上がっていくことがあります。
たとえば夏目漱石の「虞美人草」。
漱石はこのヒロインがよっぽど嫌いだったらしく、弟子に宛てた手紙の中で

「藤尾といふ女にそんなに同情をもってはいけない。あれは嫌な女だ。
詩的であるが大人しくない。道義心が欠如した女である。
あいつを仕舞に殺すのが一篇の主意である。」

とまで言い切っています。
実際、読んでいると最後のほうでどんどん文章がノリノリになっていって、
ヒロインを殺すあたりで漱石のペンがグルーヴしまくっているのがわかります。
初めて読んだときはゲラゲラ声を出して笑い転げました。
そんなに殺したかったのか、漱石。

意外なところで吉村昭さんも
あれだけ硬派な文体のくせにノリノリになることがあります。
映画にもなった「うなぎ」の原作小説は、
話が進むにしたがって気恥ずかしいくらいノリノリになります。

筆が走るといいますか、
作家さんというのは普段は文章にリミッターがかかっていて、
暴走しないように注意深く言葉を選んでいると思うのですが、
そういうタガが外れた瞬間にすさまじい勢いのある文章を書くことがあります。

もちろん、そういうノリノリな文章が失敗している例も多いのですが、
ばっちり決まると珠玉の名文が生まれます。

昔、実家の店のお客様で長期入院されていた御婦人がいて、
その方から吉川英治の「新平家物語」の愛蔵版をいただいたことがあります。
御存知の方もいらっしゃるでしょうが、吉川作品としては最長のもので、
文庫本でも16冊になるという恐ろしいものです。
まさに長期入院にピッタリ。(ちなみに三国志は8冊です)

この作品のラスト数ページの文章が自分が読んだ中でもっともノリノリな文章です。

連載だけで七年間、準備期間を考えれば十年以上はかかっているはずですので、
作家さんとしても万感の思いがあったのだとおもいます。
当時の吉川英治さんの原稿は、書き終ると夫人が清書していたそうですが、
その奥様がが清書しながらボロボロ泣いていたそうです。
まあ、文章の力だけでなく、そこまで積み重ねてきた時間というものも大きいのでしょうが、
それを差し引いても、かなり泣ける文章です。

写真のコーナー。

Photo

某雑誌掲載の絵葉書。
著者いわく、夏目漱石の「吾輩は猫である」の最初の方に出てきた
「猫じゃ猫じゃを踊っている猫の絵葉書」はこれであろう、とのことです。
画像検索をするとずいぶん古い雑誌であるにも関わらず、ホームページに載せて
おられる方が何人がいらっしゃいますので、興味のある方は
「夏目漱石 猫じゃ猫じゃ 閑古堂」で検索してみてください。

●追記

ちょっと不親切だと思ったので補足説明。

某誌1999年第7号掲載のエッセイ、「閑古堂の絵葉書散歩」からです。
著者は林丈二さん。
夏目漱石の「吾輩は猫である」の中に次の文章がある。

「やがて下女が第二の絵葉書を持って来た。見ると活版で舶来の猫が四五疋ずらりと行列してペンを握ったり書物を開いたり勉強をして居る、その内の一疋は座を離れて机の角で西洋の猫じゃ猫じゃを踊って居る。」

この文章の描写がやたら細かいので、必ずこの絵葉書は実在すると考えた閑古堂のご主人(著者)はイギリスに出向いた折、骨董市の古絵葉書屋さんで探したのだそうです。
もちろんある程度の目星はつけて。

「吾輩は猫である」が書かれた時期(1904年)に猫の絵で有名だったイラストレーターにルイ・ウェインという人がいたので、この人の作品を重点的にあたったそうです。
それで発見したのが上の絵葉書。発売時期もぴったり1904年です。

おそらく漱石は弟子からもらったこの絵葉書をそのまま作品に使ったのだろう、とのことです。

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