無料ブログはココログ

amazon

  • PCソフト
  • DVDベストセラー
  • ベストセラー
  • ウィジェット

« サーキットは狼 | トップページ | 閲覧注意 »

2012年11月19日 (月)

掲載告知~中島敦の「名人伝」~

11月20日発売の漫画サンデーに「名人伝」が掲載されます。
原作は中島敦。日本文学を題材にというお題をいただいて、
何にしようかつらつら考えたのですが、やっぱこれかなと。

中島敦と言えば「山月記」で、これは中学の教科書に採用されていたんじゃないかな。
漢文ガチガチの文体で最初はとっつきにくいのですが、読み進めると明快で、
言葉がすんなり頭に入ってくる。

詩人を志しながらも世に入れられず、発狂して虎になった男の話。
その悲哀と滑稽さを絶妙のバランスで描き出している。

中島敦の特徴は漢文体を用いることで日本語の湿っぽさを回避していることで、
この文体を縦横に使って湿っぽい男のセンチメンタルを描き出すという、
なんとも逆説的なアクロバットをやっているところが興味深い。

「山月記」の詩人などは身近にいたら本当に鬱陶しい男で、
こんなのが愚痴愚痴と自分の才能やらみじめな境遇などを語り出すのは、
酒の席でも真っ平御免なのだけど、
中島敦の作品の中ではこの鬱陶しさが「月夜の虎」といった一枚の絵に昇華されている。

この事情は孔子の弟子を描いた「弟子」や、西遊記の沙悟浄がひたすら愚痴をこぼす
一連の短編でも同じだろう。

中島作品の中で、男たちはみな自分の不運を嘆き、運命に文句を言い、
「こんな才能のある自分がなんで認められないのだ!」と涙目で怒鳴っている。
けれどそんな鬱陶しさが中島の文体によって作品として成立したとき、
多くの読書人がハッとする美しい絵になるのだ。何とも不思議な文学の魔法である。

「名人伝」は弓の名人を志す男の一代記だが、
中島敦の作品の中では題材としては陰湿さが少ない。
Photo
雑誌の注文で描いたものをそのまま出しては申し訳ないので、
本来カラーの絵をセピアにしています。

けれどこれは表面上のことで、「山月記」「弟子」「李陵」と並べられると、
やはり男のセンチメンタリズムが目についてくる。単なる滑稽譚ではない。

なぜ自分は認められないのか、なぜこんなにも不幸なのか、
「俺にはこんなにも才能があるのに!」
という自己憐憫が作品の見えない部分に隠されている。

「名人伝」という短編は情けない男の願望が文学という魔法で救済される作品である。

このような文体の秘術を尽くした作品を漫画にするというのは、だからそもそもおかしいのである。
中島敦の書いたままを読んでそこから思い思いに感想を抱けばよい。
けれど、そんなことを言っていたらこの漢文調の作品は読まれないかもしれない。
それはもったいなさすぎる。
ライトノベルなどに比べればずいぶん読みにくい文章なのかもしれないが、
この文体でしか表現しきれないものを、中島敦は見事に表現しきっている。

そういう作品への手引きとして、なるべく原作を損なわない感じで漫画にしてみました。

ふと思ったのですが、こういう作品を女の人が読んだらどう思うのでしょうか。
やっぱり「男って馬鹿だなあ」って感じなのかな。

« サーキットは狼 | トップページ | 閲覧注意 »

アニメ・コミック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1669327/47900350

この記事へのトラックバック一覧です: 掲載告知~中島敦の「名人伝」~:

« サーキットは狼 | トップページ | 閲覧注意 »