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2012年11月24日 (土)

閲覧注意

本というのは、読んでも楽しいし、装丁をじっくり鑑賞するのも、
またオツなものである。

最近は珍しくなくなったけど、むかし江口寿史先生の単行本を読んでいて、
カバーをめくったら「アタリ」と書いてあって、しばらく笑い転げたことがある。

自分の単行本だと「風より疾く」のカバーをめくるとネームの絵が出てくるけど、
友達がそれを発見してメールをくれたりした。

Image0421

彼の場合もそうだけど、買ってきた本のカバーはとりあえずめくってみるというのは、
本好きにとっては欠かせない儀式である。
良いものは布張りだし、高価な洋紙の場合もある。

村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」は、
物語を読んでから改めて装丁を見ると、ああ、なるほどと思う。
あの極悪なピンクの布張りにはちゃんと意味があるのだ。

このように、本というのは物体としても楽しめるものだし、
思わず手で撫でまわしたくなるような美しい本も多く存在する。

それなのに

世の中には極悪非道な不埒者がいて、この美しい本にいたずらをする者がいる。
本屋でアルバイトをしていた時も、そういう事例にいくつか遭遇したけれど、
最悪だったのは江戸川区の某図書館でのことである。

夏だったか、冷房の効いた館内で涼みながら、つらつらと背表紙をながめていたら、

「世にも恐ろしい物語」

という本が目についた。
ほう、そんなに恐ろしいものなら一つ読んでやろうじゃないかと、手に取って扉をめくる。
すると、その扉の裏のページ、業界用語でいうところの「表2」のところに、
黒くて大きくて油でテカテカした、触角の長いあの害虫が押し潰されていた。

自分はこの害虫が大嫌いなのだけど、とりあえずその時は平静を保ち、
そっと扉を閉じた。

さて、どうしたものか。

本のタイトルと状況を考えると、まあ、間違いなくいたずらなのだろう。
手に取ったのが自分のような人間だったので、いたずらは空振りだったのだけど、
このままにしておくわけにもいくまい。
自分はその本を手に持ってレファレンスのお姉さんのところに向かった。

「はい、貸出ですね」
と、その若い学生風のお姉さんは笑顔で本を受け取ろうとした。
「いえ、違うのです」
自分はそっと声を潜める。
「実はこの本に○○○○が挟まっているのです」

その瞬間のお姉さんのリアクションは今でも瞼に焼き付いている。

「ひえーーーー」

と叫んだお姉さんは椅子の車輪をコロコロさせながら後へ逃げたのだ。
ピンと伸びた両足が妙にコケティッシュだった。

こういう場合、勇者というのはいるもので、小学生くらいの女の子が近づいてきて、
本の扉をパラリとめくった。
「本当だーー」
素っ頓狂な声とは裏腹に、顔は明らかに笑っている。
こいつ、状況を楽しんでやがる。

司書机に広げられた本は、なかなか悲惨なことになっていた。
明るいところでまじまじと見ると、体液が本に染みだして、
かなりの広範囲を汚している。
本好きの人間としては許しがたい所業である。
犯人は銃殺にされても文句は言えまい。

「いたずらだと思うのですが」
遠方へ退避したレファレンスのお姉さんに自分は声をかける。
お姉さんは、たぶん本気でこの害虫が嫌いなのだろう、
遠くからその本の状態を確認しながら、
「そうですね、あとで勇気のある人にお願いしましょう」
とだけ言った。
本はさっきの女の子がパタンと閉じた。

後日談だが、改めて別の日に図書館に行って、
そういえばあの本はどうなっただろうと棚を探したら、
しっかりその本は存在した。
切り取るか何かしたのかなと思ったら、
あの不気味な体液の痕はしっかり残っていた。

世の中には何が楽しいのか、馬鹿ないたずらをする人間がいるけれど、
この手の最悪のいたずらをしても、結果を見届けるのは赤の他人なので、
まったく意味がないのになと、自分は考えるのである。

※イラスト化したのがこちらにあります。状況が分かりにくい方は合わせてご覧ください。

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