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2013年2月21日 (木)

口は目ほどに真実を語らない

 1

「お前はいつも、ひとこと多い」

と、子供の頃は学校の担任の先生に叱られた。
授業中に先生が真面目に授業をしているのに、
そこに小声で「つっこみ」を入れるような、困った生徒だった。
それでまあ、教科書の背表紙でコツンとやられることもあった。

高校の頃、留学生でローズマリー・オフナーさんがいらっしゃることになり、
先生が黒板に横文字で名前を書いた。

ROZEMARY OFFNER

ほとんど無自覚に、自分は「おふなさん、ですか」
と言った。
次の瞬間、教室中が大爆笑になった。
あれ?俺何か変なこと言ったのかと思って、隣の女の子を見ると、
「やだ、かわすみくん、突然なんだもん」
と顔を真っ赤にしている。
後の席の男子生徒に「俺、何を喋ったんだ?」と聞くと、
「またまた、かわすみはHなんだから」
とぽんぽん肩を叩いてくる。

後にも先にも、自分が教室をあそこまで沸かしたことはないので、
何が起こったのか、知りたいのだが、今となってはよくわからない。
ひょっとしたら、「お……何さんですか?」だったのかもしれない。
担任の文字が読みにくかった可能性は十分に考えられる。

ラーメン屋でアルバイトをしていた時にも、
ラーメン屋協会の宴会の帰り、
「おじさんも歌えばよかったのに」
と言ってしまい、おじさんを泣かせてしまったことがある。
わざとわかりにくく書いてるんだけど、
この時の自分は、本当に愚かで馬鹿だったと後悔している。

おじさんの親友で、同じラーメン屋仲間のKさんが、その頃病院で意識不明の重態だった。
ラーメン屋協会の宴会でそのことを知っているのは自分とおじさんだけで、
宴会の空気を悪くしないために、Kさん入院の事実は伏せられた。

おじさんは宴会の間中にこやかに笑っていたけれど、
心の中はKさんの無事を祈る気持ちでいっぱいだったはずだ。

だから、自分の心無い一言はおじさんにはずいぶんバカヤロウに聞こえたはずで、
ワーワー泣きながらその場にしゃがみこんでしまった。
自分は激しく後悔したけれど、どうすればいいのかさっぱりわからず、
「すいません、おじさんの気持ちも考えないですいません」
と謝り続けるしかなかった。

今思い出しても恥ずかしく、自分に対して怒りが蘇ってくる。

Kさんが亡くなったあと、おじさんも「未亡人の喪服はそそるねえ」
なんて笑っていたけれど、自分はもう、あの時のおじさんが忘れられなくて、
その心中を察するに、自分に蹴りをいれたくなる。

これだけのことがあったので、自分も喋る時にはずいぶん気を使っているのだが、
空気を読まないトンデモ発言と言うのは、頻繁に発生している。
仕事の上でも、ずいぶん御不快な思いをされた方が多いのではないかと思う。
すごく謝罪する。頭を地面になすりつけて謝罪する。

基本的に自分は隠し事が出来ず、ペラペラ余計なことを喋ってしまう人間なんだと思う。
そのことは自分が一番よくわかっているので、
絶対に余計なことは言うまいと毎度心がけているのだが、ここ一番でアホな発言をしてしまう。

そういう危険極まりない自分なのだが、
「君だから話すんだけど」
と、いろんな人の秘密がコロコロ転がり込んで来ることも多い。
いちおう、常識人として認めていただいているのだと思うので、
そういう場合は命がけで秘密は守る。
自分がペラペラ喋ってしまうのは、その場その場の素直な感想であり、
他人のプライバシーに関することは喋らないという予防装置は働いているので、
一緒にお酒を飲むときなどは、安全な人種です。

ただ、本音がポロポロこぼれ落ちるというのは、
自分にとっては全く迷惑な性質で、
なんとかならんもんかなと、いまだに悩んでいたりする。

 2

実はこれについては一つだけ解決方法が存在している。

自分は名古屋時代から標準語で喋っていたのだけど、(両親名古屋じゃないから)
ときどき母方の熊野弁が出ることがある。
この熊野方言を喋っているときの自分は完全に別人格で、
口の達者な詐欺師のような人格に変わる。
本音を隠して、小ずるい口先人間に変貌するのだ。

以前、とあるご婦人とその娘を前にして、
「俺、実は占いやるんですよ」
などと嘘をついて、手相を見ながらいい加減な占いを始めたことがあった。

知ってる人は多いと思うけれど、
占いというのはほとんど会話のマジックみたいなもので、
「運命線がなんたらかんたら」
と基本的なことを喋っていると、特に女性などは、
「そうそう!実は私も今そのトラブルを抱えていて……」
などと話のタネをバラしてくれる場合が多い。
「そのトラブルが手相に出てますな。だからこの先はうんたかんたら」
と、相手が言って欲しそうなことを並べ立てれば、占い師のいっちょあがりである。
「すごいすごい、先生当たってるわ!」
純真な母娘は自分の口車にまんまとのってしまった。

その家を出てから、自分のやらかしたことの無責任さに、
「俺は馬鹿か」
と標準語で自己嫌悪を感じたのだけど、口先だけで人を有頂天にさせるというのは、
まんざら悪い気持ちでもない。

ところが何年かたって、ある場所で
「先生!」
と声をかけられた。
はて、先生などと声をかけられる覚えはないのだけどと振り返ると、
こともあろうにスキンヘッドの女性がニコニコしながら近づいてくる。
正直言って、かなりビビった。

「覚えてませんか、昔占いをしてもらったじゃないですか」
「ああ……」
なんでも近くの芸大に通っているとかで、あの時の占いは本当に良かったですと、
純朴な笑顔で語りかけてきた。つるつるのスキンヘッドで。

……俺は、一人の少女の人生を狂わせてしまったのじゃないだろうか……

相手の会話も受け流すばかりで、自分は一刻も早くこの場所から逃げ出したいと思った。

以来、熊野弁で詐欺師めいた会話をすることは、自分にとってタブーとなっている。

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