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2013年6月14日 (金)

またブラームスの話

音楽史上、イメチェンする作曲家は珍しい気がします。

ベートーヴェンやモーツァルトは、青年時代のイメージのまま、
そのまま大人になったような印象がありますし、
19世紀を代表するアイドルスターだったリストにしても、
若い頃のヘアスタイルのまま、老人になっちゃった感じがします。

ただブラームスだけが、ある時期を境にはっきりっと別のキャラクターになっています。

クララ・シューマンの教え子に、フローレンス・メイというイギリスの御嬢さんがいて、
彼女が二十代の頃、ブラームスにピアノを教授されたことがありました。
音楽之友社の「ブラームス回想録集」の一巻目に載っていますけど、
青年時代のブラームスは、スレンダーなイケメンで、女の子には結構やさしい。

「先生の作品を演奏して、私に聴かせてください」

授業のあとに教え子にせがまれて、ブラームスは自作の主題と変奏を演奏します。
弦楽六重奏曲第1番の第二楽章をピアノ用にアレンジしたものですが、
こんな曲を目の前で演奏されたら、若い女の子なんかイチコロだろうと思います。

ピアノ版ですが、Youtubeのアドレスはこちら
昔、日本のテレビCMで使われていたこともあったはずです。
(ピアノだとなかなか弦楽のような響きにならないせいか、エコーがきつくなってます)

カッコいいイケメンの作曲家にピアノを教えてもらい、
しかも自作を自分のために演奏してもらった……
フローレンス・メイにとってそれは美しい少女時代の思い出なのです。

Img076_2_2
それから十年近くたって、彼女はブラームスと再会します。

ベルリンでの滞在中にハンス・フォン・ビューロー指揮のオーケストラに彼が出るらしい。
きっと多忙だろうから、リハーサルでなりともぐりこんで私がいると気付いてもらおう。
三十路過ぎのレディが乙女全開で胸をドキドキさせながら劇場にもぐりこむのですが、
その時、ビューロー氏とともにステージに出てきたのは、
彼女の知るブラームスとはまるで別人のずんぐりと太った中年のオッサンでした。

髪型は昔の面影があるのですが、もじゃもじゃのヒゲが顔を覆っていて、
とてもこれがあのブラームスとは思えない。
はっきりとは書いていませんが、たぶん彼女はかなりショックを受けたのだと思います。
いやいや、あれがブラームスとかありえないし(笑)……なんて感じで。

Img075_2
それでも人波をかき分け、舞台上のブラームスに近づこうとすると、
ブラームスはひと目で彼女がフローレンス・メイだとわかったようで、
「今ベルリンにいるの?」
と言葉をかけてきたそうです。
すぐにまたファンの波にもまれて引き離されてしまいましたが。

多少オッサン臭くなっても、自分のことをちゃんと覚えていてくれたというのは、
女性にとってはものすごい高得点みたいです。
このあともフローレンス女史のブラームスに近づこう作戦は続きます。
そして晩年のブラームスと親しく接するようになるのです。

ブラームスは気難しい人間嫌いの作曲家と言われることが多いのですが、
彼女と再会してからのブラームスは、なかなか気さくなおじさんです。

「先生のピアノ協奏曲をロンドンで演奏して、あんまり難曲だからすごく疲れました。
私、田舎に転地療養に行きましたのよ」
と、冗談めかして言うと、
「そりゃ怖ろしい話だ。そんな体に悪い曲を作っちゃいかんな」
と答えたそうな。
(以前ブログで取り上げた変ロ長調の第2番協奏曲です)

ベートーヴェンにしてもモーツァルトにしても、
日常でどんな会話をしていたのか、あまり残っていないことが多いのですが、
ブラームスくらいの時代になると、この作曲家の生の言葉がとても価値があるものだと
周囲もわかっていますから、かなりの量の発言が残されています。
それは気難しい毒舌家のブラームスには不幸なことだったかもしれませんが、
後世の人間にはたまらなくおもしろかったりします。

作曲された音楽もおもしろいですけど。

東京はここ数日雨が降り続いていまして、
こういう天気ですと、何かしっとりした曲が聴きたくなるのですが、
ブラームスのバイオリンソナタ「雨の歌」なんかは、そんな気分に合うような気がします。
昔、知り合いに聴かせたら、
「どこが雨なんだ」
と説明を求められましたけど。

タイトルのせいでそう思い込んでいるのか、自分はどう聴いても、
この曲は雨の日の音楽にしか思えないんですけどね。
聴く人によって、感じ方と言うのはずいぶん変わるものかもしれません。

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