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2013年10月 3日 (木)

酒は涙か溜息か

日本の音楽シーンから国民的ヒット作が生まれなくなってずいぶん経つ。

以前にもここへ書いたような気がするけれど、僕の子供の頃は日本歌謡界の黄金時代で、
山口百恵もいたし、西城秀樹や沢田研二もブイブイ言わせていた。
思春期の頃には松田聖子も近藤真彦もヒットを飛ばしまくっていた。

美空ひばりは現役だったし、北島三郎は演歌の帝王だった。

サザンオールスターズは、はじめてザ・トップテンに出た時のことを良く覚えている。
スポットライトのコーナーで、ライブ会場からの中継だった。
歌ったのは「勝手にシンドバッド」。
沢田研二の「勝手にしやがれ」とピンクレディの「渚のシンドバッド」がくっついている。
何じゃこりゃと思った。
曲は妙ちっくりんで、「今何時!?」というサビのフレーズだけが頭に残った。
(今考えてみると、短い音節でするどい感じのする絶妙な日本語だ)
アラジンみたいにただの一発屋だろうと思っていたら、
「いとしのエリー」が出てきて、たちまち一流のアーティストになってしまった。
……アラジンも良かったですよ。「完全無欠のロックンローラー」大好きだったし。

サザンの桑田さんの作る曲にはのちの音楽シーンにつながる大きな特徴があった。

歌詞が何言ってんのか聞き取れないのだ。

はっぴーえんどや桑田さんによって、歌謡曲は日本語のリズム的な制約を抜け出して、
カッコいいサウンドに日本語をのせるオシャレなミュージックへと変貌した、と言われる。
誰が言ってたのか忘れたけど、なるほどなと妙に納得させられた。

あと、80年代にはBOOWYがいた。
CMソング以外ではテレビに出てこないアーティスト。
歌詞が、歌謡曲的な情念の世界からオシャレな口説き文句に変わった。
「俺は君が好きだ」
ではなく、
「君はいかしてる。最高だ」
の違い。
心の中身を吐露するのが歌謡曲だったとすると、BOOWYはひたすら女の子を口説いた。
耳元でささやかれると気持ちのいい言葉が次々と飛び出した。

それから、中島みゆきと松任谷由美の無理やりな対立構造もあった。
この二人は清少納言と紫式部に比べられたりしたけど、確かにそんな感じ。
中島みゆきは文学!と叫んでた人がいたっけ。

……それに比べて最近のミュージックシーンのさみしい事よ……

自分たちの世代からするとどうしてもそう見えてしまう。
だから「うるさいおっさん」と若い者にウザがられながらも、
握手券ってなんだよ、同じCDを買い捲るってなんだよと、
小うるさいことをゴチャゴチャと言ってしまうわけだ。
部屋の中に聴かれもしない同じCDがうず高く積まれている情景は、
奇妙と言えば奇妙。日本人もついにおかしくなってしまったのかと感じないでもない。

ところが、実は日本人は最初からそういう変な人種なのではないかとこの頃は思うのだ。

日本の歌謡界の歴史をひも解いてみると、
いわゆる昭和歌謡の黎明期に不思議な現象が起きている。
藤山一郎という歴史的な大歌手がいるのだけど、この人が古賀政男と組んでヒットさせた、

「酒は涙か溜息か」

と言う曲は、昭和6年当時100万枚を売り上げている。
日本史上最初のミリオンセラーなのだけど、当時日本領内にあった蓄音機の数は、
たった20万台だったという。

残りの80万枚はいったいどこへ行ってしまったのだろう。

まあ、一概にAKB商法とは比較できないのだけど、
音楽を音楽として楽しむより、熱狂的ブームの中で買うという行為を楽しむ、
そいう奇妙なところが日本人にはある。
まあ、かわいい女の子と握手出来るって魅力も大きいんだろうけど、
昭和初期の事例から考えて、AKB商法はとても日本的な現象だと言える。

買うという行為には、それ自体に欲望に訴える何かがある。
お金を支払うとき手に入れるものは、何も商品と言う形のあるものばかりではない。
ファンとアイドルとの連帯感みたいなものかもしれないし、
あるいは社会そのものとの連帯感なのかもしれない。

人間がお金を払うという行為には商品の獲得以上の何かがある。
一世紀近く前の日本人が藤山一郎のレコードを買い捲ったという奇妙な現象には、
その辺の秘密が隠されているのではないかと、
自分は一年くらい前からずっと考えているのだけど、上手く言葉にまとめられない。

あるいは、とても素敵な歌を街中で耳にしたとき、体が震えるくらいの感動をして、
その感動を与えてくれた人に何かせずにはいられないという、すごく素朴な衝動が、
蓄音機は無いけどレコードは買うという謎の行動になったのかもしれない。
……自分の願望もあるだろうけど、日本人ってそういうものだよなと信じたい部分もある。

レコードやCDを「買う」という行為には、きっと等価交換以上の意味があるのだろう。
藤山一郎のミリオンヒットに始まる昭和歌謡の巨大産業化と、AKB商法を考えるにつけ、
「感動を形にしたい」という日本人の律義さはいいものだよね、と、
言ってみたくもなるのである。

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