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2013年11月24日 (日)

敗者復活 その2

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十年くらい前だったか、取材写真を現像しようと思い、
近所の写真屋に足を運んだ。

小さな店先に白と緑の例のフイルムメーカーの幟が立っていて、
扉をくぐると
「いらっしゃいませ」
と初老の店主に声をかけられた。
なにしろフイルムは大量にあったので、それをまとめる間、店主と話をした。
「後ろを御覧なさい。」
見ると、一枚のパネルがあって、羽の生えた昆虫の写真が写されている。
「どうです」
「いや、どうですと言われましても」
ただの虫の写真としか答えようがない。
「珍しい昆虫なのですか」
「そうです。なかなか撮影できないめずらしい虫で、ここまで鮮明なのはめずらしいのです。コンテストでは先生方にとても褒められまして、賞もいただきました」
「ほう、すごいですね」
……他に答えようがない。
それから三十分ほど、店主の講義は続き、いいかげん疲れてきた頃になってようやく解放された。
帰りに浴衣美女撮影会のパンフをいただいた。どうせなら美女の写真の方が良かったなと、
不埒なことを考えた。

仕事場でアシスタントさんにパンフレットを配って、
「一緒に浴衣美女と戯れにいきませんか」
と誘ってみたが、誰ものってこなかった。
「アイドルならまだしも、その辺の三流モデルさんでしょ」
「まあ、そうだろうね」
「女なら何でもいいというのは男としての堕落ですよ」
言う事がいちいちきつい。
「いや、でもこういうところに思いがけず未来の売れっ子がいるのかもよ」
「自称二十代前半の三十オーバーじゃないですかね。浴衣だし」

みんな頑張って生きてるに、命の健気さに対する愛情が足りないと思った。

あれから何年も経って、自分の一眼レフは押し入れにしまわれたまま、
もっぱらデジカメで写真を撮るようになった。
写真は初めの頃はデーターを店でプリントしていたが、
今では自宅で必要なだけプリントアウトして使っている。
バックアップさえとってあれば、紙に焼き付ける必要なんてほとんどないと悟った。

一度だけ例の店にSDメディアごと持ち込んだことがあったけれど、
店主は初めて見るらしく、首をひねるばかりで、
「一週間ください」
と言い出した。
仕方ないので池袋まで行って現像屋でメディアを端末に入力し、
プリントが上がるまで近くのラーメン屋でラーメンを食べた。
一時間ほどでプリントは終わった。

「そういえばあの虫の名前はなんだったっけ」
また機会があれば聞いておこうと思った。
あの写真屋もしばらくすればデジタルに対応できるようになって、
時代に追いつけるだろうと楽観的に考えた。

「あの店なら、さっき警察入ってましたよ」
アシスタントさんがそんなことを言いだしたのはそのすぐ後のことだった。
何事だろうと気にかけていたのだけど、
やがて店は畳まれ、今では跡形もなくなってしまった。

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……前回に続いて過去の駄文復活です。
(こっちのタイトルの方が良かったな)
書いたのは去年の九月です。
これをボツにした理由は単純で、

僕にはなんで警察が入ったのか、確実なことがわからなかったから

だったりします。
聞こうと思えばご近所で聞くこともできるのですが、
なんか野次馬根性丸出しでカッコ悪いなと思うので、
現在に至るまでそのままです。

デジカメは本当に便利な機械で、
フイルムカメラの時代を知る人間には、こんな有難いものはありません。
たった三十枚のプリントのために、お金と時間がずいぶん吹っ飛んだもんです。
でもそんな「無駄」だと思っていたものも、この頃は妙に愛しく感じられるもので、
若い人相手に
「昔は大変だったんだよ」
なんて、ニコニコしながら話したりするわけです。

本当に、世の中はどんどん進歩していくし、
便利な機械は身近に次々と入り込んでくる。
ただ、この頃は進歩が人間の幸福ではないんだよなと、しみじみ思うのですよ。

写真
P1000870

これ、前にこのブログで使ったことあるけど、
池袋のジュンク堂の上から撮った写真です。その別バージョン。
あのデカイ本屋さんは面白いですよね。
広いし品ぞろえがユニークだし、のんびり本を選ぶには最適です。
アマゾンは便利で素晴らしいシステムだけど、
本屋さんには本屋さんの良さがあります。
本との出会いまでネット任せというのは、ちょっとさびしいですしね。







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