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2013年12月 9日 (月)

敗者復活 その4

駄文紹介の4回目。
思い出としては笑えないので没にしたものです。

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新谷かおる先生の傑作漫画に「エリア88」というのがある。
有名な作品なので今さら解説もないのだけど、
日本の民間航空会社のパイロットが、親友に裏切られ、
中東の激戦地帯で、戦闘機乗りとして闘い続けるという、
とても面白い漫画である。

温厚な青年パイロットが、地獄の戦場で空の狼となり、
日本に戻るため、恋人の元へと帰るために殺戮を続けるというこの壮絶な物語は、
漫画史に残る傑作だと、自分は考える。

ところで、これと似たような経験を、自分は一度したことがある。
スケールはかなり違うのだけど。

たぶん、高校の二年か三年生くらいじゃないかと思う。
夏の暑い盛りに、古い友人から電話がかかってきた。
「かわすみ、お前、絵が得意だったよな」
「うん、まあ、程々にはね」
「君のその才能を生かしたアルバイトがあるんだけど、やらないか」
「どういうバイトなんだ」
「来てみればわかるって。他にも何人か誘ってあるからさ」

今なら、この会話の段階で怪しさ120%なのだけど、
当時は「友情」というものを純粋に信じていたし、
小学校、中学校と馬鹿をやった仲間ではあったので、そのバイトに参加することにした。

土曜日の早朝だったかな、名古屋の南の方のどこぞの地下鉄の駅で地上に出ると、
三人くらい、中学時代の馬鹿仲間が集まっていた。
卒業後の進路はみんなバラバラで、工業高校だったり進学校だったりした。
しかし、そこに電話をかけてきた友人Nの姿はなかった。

そのかわり、ガタイのいい土方の親父さんたちが5,6人、我々を取り囲んだ。
「お前らがNの友達か」
「はあ……」
「じゃあ、これから現場に行くから、みんなつなぎに着替えな」

我々はライトバンの中から引きずり出された湿ったつなぎを身にまとい、
その「現場」とやらへ連れて行かれた。

「まあしかし、絵の才能が必要と言うのだから、ペンキ塗りか何かだろう」
と、この段階ではまだ友人Nの言葉を信じていたのだけど、
現場がどこぞの中学校の家庭科室で、
しかもその床が完全に取り払われ、土がむき出しとなり、
その土を工事用一輪車で外に運ぶ仕事だとわかったときに、
自分は「裏切り」の苦さを存分に味わうこととなった。

普段、運動なんかしないなまった体で、
一輪車に土を盛り、細長い一枚板を綱渡りのように登って、
廊下まで持ち上げる、これだけで全身の筋肉が悲鳴をあげる。
そこからさらに、青いシートを敷いた長い廊下を延々と進んで、
非常口からまた一枚板の上を下って、
校舎の外にザーッと土を捨てる。
空になった一輪車を押してまた家庭科室に戻る。
これをひたすら何十回も繰り返す。

何処にも絵の才能を使う余地がない。

だいたい、本人が顔を出さないのがおかしい。
友人を売りとばして、奴はいったい何をやっているのだ。

彼は中学卒業後、就職して堅実に働いているという話だった。
年に数回、中学時代の「仲間」で集まって、ボーリングをしたり、
スケートをしたり、楽しく「友達」をやったりした。

今回もそのノリだろうと思ったのだけど、
自分の考えは、激烈に甘かったようだ。

昼になって、仕出し弁当の昼食が出た。
(この当時は今ほどコンビニは普及していなかった)
自分はやれやれと思いながら、とりあえず腹が減っていたので完食したのだけど、
一緒に騙されたK君は、胃が食べ物を受け付けないようで、
炭酸飲料をなめるように口にするだけだった。
M君はしんどそうに日影で俯いていた。

それから夕方まで、過酷な労働は続いたのだけど、
もう立てねぇ、この地獄から一刻も早く解放してくれ、となったところで、
裏切り者Nがお調子メガネをピカピカさせながら、
「よう、元気?」
なんて感じで現れた。

悔しいけれど、体はボロボロだし、
長時間ガタイのいい親父どもにこき使われた後だったので、
知ってる顔が現れたのがちょっとうれしかった。

「何が君の才能を生かしたアルバイトだよ」
と睨みつけると、
「俺、そんなこと言ったっけ?」
とすっとぼける。
確か給料は一日働いて七千円だったと思うけど、
まったく割に合わないバイトだった。

ちなみに、人生最初のアルバイトだったりする。

そのあと、お詫びと称して、Nの運転する車に乗って、
どこぞのスナックまで飲みに連れて行かれた。
スピードキチガイのNの運転する車は、商店街を猛スピードで突っ切り、
「ああ、新聞に載ってる若者五人乗りの暴走車が大破ってこの状況なんだろうな」
と、恐怖に青ざめた。

馬鹿な若者として新聞に載るのはすごく嫌だけど、
今の自分はどう考えても馬鹿な若者なのでどうしょうもない。

ちなみに後になって彼が無免許であることを知った。

「河原で兄貴の車を運転して覚えたんだ」
と、酒を飲みながら話すNだった。

友達は選ぶものだよなと、心から思った。

まったく自慢にも何にもならないし、
むしろカッコ悪くて情けない話なのだけど、
Nとしては、仕事で急遽人を集めなくてはならなくなって、
知り合いをかき集めないとかなりヤバイ状況だったのだろう。
今ならそこまでは想像できるし、それはまあ、仕方ないかなとも思うのだけど、
やっぱり、やり方が汚い。

筋肉痛は数日の間全身を苛んだ。
翌日に「月曜日も仕事あるんだけど来ない?」
と誘われたけど、全力でお断りした。

どうしょうもなく残念な思い出である。

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肉体労働って一か月くらい辛抱して体を作らないと、
ひたすらしんどいもんですよね。

P1010359

東武東上線、大山駅横の踏切。
この写真自体、トレスして何かに使ったと思います。

最近、歩きスマホをしている人をよく見かけますが、
本当にあれだけは止めた方がいいです。
自分も何回か「歩き小説」をやったことがありますが、
車が急に出て来ても、「きょとん」とするだけで、
自分が今危ない目に合ったという事さえわからなかったりします。

せっかく親からもらった命なので最期まで大切に使いたいものです。



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