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2014年1月30日 (木)

トレース台

また新しいトレース台を買ってしまった。
トレース台というのは、光る画板みたいなもので、
一番身近なものだと、お医者さんがレントゲン写真を見るときに使う、
アレです。

医療用のはシャウカステンという名前があるらしいです。
ウインナーみたいな名前です。

トレースというのはもともと製図の用語で、
図面に紙を重ねて、新しく書き写すことを言います。
トレーシングペーパーという透過率の高い紙を使います。
今はコピー機というものがありますが、
昔はそんなものありませんでしたので、いちいち書き写していたのです。

今の若い子は青写真とかガリ版刷りとか、知識でしか知らないのかもしれない。

それはともかく、この時使うトレース台というものを、
漫画家さんも使うようになりました。
たぶん、80年代くらいからだと思います。

一番良く使うのが背景トレース。
写真をコピー機で使いたい大きさに複写します。
コピー紙は薄いですので、写真そのままよりは光が透けやすいという利点があります。
この上に薄い紙、110㎏の原稿用紙を重ねまして、
浮かび上がる画像をインクとペンでなぞっていきます。
すると、まるで写真のような絵が出来上がります。

昔、アシスタントのSさんが自腹でトレーシングペーパーを買って来まして、
「こっちの方が細かいのまで描けます」
と言ってトレペでトレースを始めました。
ああ、あれインクがのるんだと、当たり前のことで感動してみたり。
それを紙にテープで固定して、
コピーすれば背景画として使えるようになります。
面白いことに、裏返しにしてもコピーできますから、反転画像としても使えます。

コピーした背景画は裏にスプレーのりをかけて、
原稿用紙に貼りつけ、カッターで切ります。
枠線や人物画は先に描いてありますので、それが見えるようにカットします。

誰が考えたのか知りませんが、アシスタントの人に教えてもらうまで、
まったく想像すらしなかったやり方です。

ここで問題になるのが、トレース元の画像をどこで手に入れるかです。
自分はそのためにカメラを持ち歩いてパシャパシャ写真を撮り歩きますが、
それは雑誌や写真集の写真を使うと後がめんどうだと知っているからです。

昔、原稿を投稿して賞をいただいたとき、
自分は賞金が20万円くらいだったのですが、
もっといっぱい貰った人で、作品が本誌に掲載されることになった人が、
掲載直前に雑誌の写真をトレースしまくっていたことが判明し、
片っ端から書き直しさせられたという事がありました。
まだずいぶん若い人だったから単純に知らなかったのだろうけど、
出版社は大手になるほど権利関係の問題に敏感になります。
著作権のある写真をトレースするのは完全にアウトです。

これは背景トレースの場合ですが、
他に、ネームをトレースするという場合もあります。

ネームというのは漫画の設計図というか、
「こんな漫画になります」
というのを紙に書いたものですが、
たいていは簡単な絵とセリフが入っているだけのものです。
これをファックスで編集部に送って、
「いいよ」
と許可が出たら仕上げまで一気に書き上げます。(今はネットで送ってます)

業者の仕様書って感覚のものです。

ところが、この段階で下書きレベルの絵を入れてしまう漫画家さんがいます。
編集部はそこまでは求めていなくて、
「キャラクターの区別がつけば○書いてチョンでもいいよ」
と言ってくださるのですが、なんせ物語の設計図ですから、
書いてる間に頭の中でそのシーンがどんどん展開していくわけです。
キャラクターの表情とか、仕草とか、背景とか……
今描かなきゃ二度と思いだせない、そう考えるともう描きこまないではいられない。

……で、ついつい下書きレベルのネームを書いてしまうわけです。

あちこちの出版社に持ち込みしていた頃、
そんなネームをいくつか見せていただいたことがあるのですが、
アクションもので筋肉までみっちり描きこんでいるものもあって、
「いやいや、そこまでやる必要はないだろう」
と思ったりもしました。
編集部としては注文がある場合は全面的に描きなおしを要求するわけでして、
何時間もかけて描いた絵であっても、ばっさり削除します。

それがわかっていても、こればかりは描きこまないではいられない。
そういう悲しい宿命の漫画家さんがいるわけです。

で、そうやって何とか審査をパスしたネームですが、
それを原稿用紙に下書きする頃になると、人生を二度やり直すようなもので、
なんとなく気分がのらないという事もあります。
何度描きなおしてもネームのような熱い絵にならない。
そういう場合、
「これにペン入れをしよう」
と考えるわけです。

そこでトレース台の出番です。

自分がトレース台を使うのはたいていこのパターンです。
ネーム用紙を原稿用紙に貼りつけて、裏から光を当てて、
原稿用紙にそっくりそのまま写し取ります。
大使閣下を描いていたころはネーム用紙もB4の紙でしたから、
ネームをほぼそのまま使っていました。

ただ、原稿用紙に直接下書きしたほうがいい絵が描ける場合もありますので、
あくまで補助的な手段です。
調子の悪い時のネームだと、トレースしているときにその気分が戻ることもあります。

レコードの針と溝みたいな所もトレースにはあります。

ずいぶん昔に、知人の絵を十人分くらいトレースして、
一枚の絵を描いたことがあるのですが、
他人の絵をトレースすると、その人が頭のどの部分を使って絵を描いているのかわかって、
ちょっと気持ち悪くなったりします。
「ああ、この人の絵は右の脳みそを使って描いてる」
とか、なんとなくわかります。
逆に、自分よりうまい絵だと賢い人間になったような気がします。
普段使っていない部分が刺激されるからかもしれません。

トレース台というのも時代によって進化するもので、
古いものは10ワットくらいの蛍光灯を入れていましたから、
本体の厚みも五センチ以上はあったのですが、
この頃は発光ダイオードの板状になっていて、ずいぶん薄い物も出回っています。

かなり高いですけど。

発光ダイオードのものは、まだ発売されたばかりの頃、
「これこそ僕がもとめていたものだ!」
と思って買いました。四万円以上したかな。
電源ケーブルの途中にコンデンサーがついていて、
スイッチを入れるとブンブンとすごい音がしていました。
厚みは五ミリくらい。大きさはA3.
コンデンサーのせいでラジオが聞けないくらいで、使いやすいものでした。
「でした」と過去形で語るのは、今は作動しなくなっているからです。
接触部分がかなり軟弱で、三年くらい使っているうちに電気が通らなくなってしまった。
一体成型だったからそこだけ取り換えることも出来ない。

それからしばらくは必要な場合だけ蛍光灯のものを使っていたのですが、
厚みが五センチ以上となるとやっぱり使いにくい。
そこで、また買ってしまったわけです。

P1040731

P1040732

マクソンのものは厚みは一センチくらいなのですが、
これくらいだと特に不都合もなく、机に置いたままで絵が描けます。
値段も結構安くなってます。あくまで比較の問題ですが。
表面が波立っているのが少し気になりますが、
(出荷時の透明シートは剥がしてる)
良いものだと思います。三カ月使って特に問題は感じませんでした。

マクソンさんにはスクリーントーンでずいぶんお世話になったものです。
プロのアシスタントさんが入っていた頃、
「グラデーションのトーンはマクソンが一番です」
と言われて、以来ずっとグラデのトーンはマクソンを使っていました。
ドットがずれないのと、表面が削りやすいって理由だったと思います。

最近はコミックスタジオを使うので、スクリーントーンを貼ることはなくなったのですが、
このコミックスタジオにもデータのトーンでマクソンが入っていたりするので、
知らず知らずにずいぶんお世話になっていたりします。

以上、なんとなくトレース台の話を書いてみました。

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