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2014年6月20日 (金)

点と線

ときどき、一般人にはまったく興味のなさそうな技術的な話をしたくなります。

以前にこのブログにも書きましたけど、絵の技術の話は、
興味のない人にはひたすらうざいです。
カタギの職業の人達はもちろん、漫画編集者、アシスタント、
このあたりはアウトです。

まともに聞いてもらえません。

アシスタントさんとか、なんでかなと思うけれど、
まあ、自分の教え方が悪いのだろうなと反省をするのです。

自分が大昔にアシスタントさせていただいた先生の場合、
「かわすみさんはペンの使い方が駄目ですね」
というんで、しばらく特訓を命じられました。

まず、原稿用紙に横一文字に線を引き、
それに沿ってフリーハンドで平行線を描き続けます。
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使っていたのは丸ペンだったと思うけど(アシスタントは丸ペンで細い線を引く)、
これで横の線を引くのが結構きついです。インクがなくなったら、
その途切れたところから「継ぎ目がわからないように」引き始めます。

僕は上から下に引き下ろす線は、まあ大丈夫なのですが、
横に引くのは結構苦手で、線がプルプルと震えます。
「これじゃあ使えないよ」
と怒られます。

次、丸を描く練習。 
コンパスで半径三センチくらいの円を引き、
その一ミリくらい外側にフリーハンドで丸を描いていきます。
……これは結構おもしろかったけど、プロからするとグダグダの線みたいでした。

先生もさすがに呆れたのか、この訓練は一日で強制終了しました。

一応弁明させてもらうと、自分が初めてペンを握ったのは小学三年生の時で、
それ以来、たぶん300ページくらいの漫画原稿は描いていたと思います。
それでも、プロに要求されるきれいな線というのは、自分には引けませんでした。

絵を描くのは大好きですが、ペンで線を引くのは大嫌い、
これが十代から二十代の頃の僕だったりします。

ところがねぇ、引ける人は引けるんですよね、漫画の線。
超有名漫画家さん……おそらく名前を出せば誰でも知ってる方、
そこのアシスタントさんが三カ月だけ入ってくれるというので、
狂喜乱舞したことがあります。

で、絵を見せてもらったら、すごく上手なんですよね。線とかちゃんと引けてる。
さぞや修業を積まれたのだろうなと思ったら、
「いや、漫画を描き始めてまだ数か月なんですよ」
という話。オラびっくりしちまったぞ。

なんか、その先生のところでは一番下の方で、ちょっと仕事場に入れないから、
先生の奥様が出産で抜けるまで、かわすみのところでアシスタントをしてちょ、
という話だったと思います。
でも、有名少年誌の新人募集のイラストとか描いていて、それがもうプロなんですよね。
生まれながらに持っているセンスが違う。たった数か月でそのレベル。
神様ってなんて不公平なんだろうって思ったよ。

ただ、数か月というのは本当みたいで、ちょっとしたことが変だったりはしたのです。
たとえば、
「俺、丸ペンは苦手なんですよ」
というので、Gぺんで背景を描いていたんだけど(それでもきれいな線引いてた)
それじゃあこの先不便だろうと思って、線を引くところを見せてもらった。
そしたら、なるほど線がギギギギギと小刻みに震えている。
で、ちょっとおかしいなと思って借りて引いてみたら、僕でもギギギギギとなる。
「……これ、文字を引く専用の丸ペンだよ」

ペン先にはいろいろ種類があって、漫画を描くのに向いてるものもあるし、
向かないものだってある。
英語のスペルを書くのに特化したペン先なんかは、まず漫画には向かない。
「ちょっと僕の使ってるやつで線を引いてみてよ」
と貸したら、
「うおおおおおおおおおおおお」
みたいな感じでスラスラ線を引きやがる。僕よりきれいに使いこなしてやがる。

その大先生のところではアシスタントとの会話がほとんどなかったそうで、
自分の使ってる道具がおかしいことにずっと気が付かなかったそうです。

はじめて漫画を描く人にはありがちなミスなのですが(僕もやってる)
それをプロ並みの絵を描く奴がしでかすから、ちょっと面白くなかったです。

漫画の絵というのは、描ける奴はさっさと描けるようになります。
これはもう「才能」というしかない。
前世が手塚治虫というやつがゴロゴロしているのが漫画界なのです。
で、僕の場合は前世が手塚治虫ではなかった。
そりゃそうだ、大学生の頃まで手塚先生はご存命だったし。

僕にはハンディがあったという言い訳もできます。
生まれてからずっと両親が共働きだったので、
鉛筆の持ち方が壊滅的に悪かった。薬指にペンダコが出来てました。
これはちょっと矯正したくらいではどうにもならない。

それでも、きれいな線を引きたいという欲求だけは人一倍あるのです。

だから、この方面ではいろいろ試行錯誤しましたし、
「描けない奴がそれっぽく描ける方法」というのは、
いろいろ開発していたりするのです。開発しているうちに歳をとっちまったけど。

例えば、「右向きの顔は描けるけど、左向きの顔は描けない」
という古典的な命題にも、自分なりの解答はもっていたりします。
それ、姿勢が悪いか、ペンの握りが悪いかで、絵の焦点が紙の右側にずれてるんです。
丸を描いてみるとわかります。○の左半分はきれいに描けても、
右半分はおそらくきれいに描けないはずです。
○の中心軸が○の外側に飛び出しているんです。
「絵の重心がどこにあるのか」を意識して描くようにすれば、
たぶん、数か月で矯正できます。
僕は十年くらいかかったけど。

わかりやすく描くと、こんな感じ

   ○ ×

×のところにコンパスの針を刺しても丸い線は引けないです。
左の線はなんとか引くことが出来るかもしれないけど、右は無理です。

ペン入れにしても、正しいデッサンで描かれた下絵なら、難なく線が入ります。
コンパスで描いた丸にペン入れをするのは、割と簡単なはずです。
重心ははっきりと丸の中心にありますから。
でも、自分が書いた丸にペン入れが出来ないというのは、
それはもう、その人のデッサンが曲がっているからとしか言いようがない。

デッサンがいびつだと、ペン入れによってそのいびつさが際立ってきます。
ここがプロの絵が最初から描ける人と自分の違いかなと思います。
だから、以前にこのブログで発言した、
「輪郭からペン入れする」
というのは、下絵のいびつさを矯正するための、苦肉の策だったりします。
先に輪郭を囲ってしまえば、中の線はそれ以上いびつになりようがないわけです。

とまあ、こういう話をアシスタントさん相手に一方的に話したりするのですが、
「なんかよくわからないです」
と困った顔をされるので、
「……ごめんなさい」
と謝るしかないです。

最近、作画作業が終わりまして、
ペン入れしている間ずっとこんなことばかり考えていたので、
ちょっとここに吐き出してみました。
デジタル全盛の現在では役には立たないかもしれないけど、
何かのヒントくらいにはなればと思います。

Photo
うん、まあ、左向きの絵はいまだに苦手なんですけどね。

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