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2015年10月14日 (水)

書道の話

伊豆急行様でぶらり旅の第3弾をやっていますので、ちと宣伝。

伊豆急行100系ぶらり旅第3弾

これ、本当に楽しかったので、鉄子の三巻をご覧になった方は是非。
というか、僕がもう一回行きたい。
「鉄子の育て方」の宣伝もしていただいてます。

画材についてあれこれ書きたいなと思っていたのですが、
で、まあ実際にあれこれ書いてみたのですが、
結局ここへはアップしてません。
けっこう難しい。

「弘法は筆を選ばず」といいますが、
実際はどうなんだろう。いい筆はやっぱりいい字が書けるような気がします。
小学生の頃の僕は、クラスでブラックリスト的な意味でナンバーワンが多かったのです。
忘れ物がナンバーワンとか、漢字を知らないのがナンバーワンとか、
あと、字のクセの強さがナンバーワンとか先生に言われたな。
ぶっちゃけ、字が汚いってことなんだけど、
これを父兄参観か何かで親に言われたので、速攻書道教室に送り込まれました。
たぶん、小学校五年生の頃です。

先生は眼鏡をかけたロッテンマイアー先生のようなタイプの方でした。
アルプスの少女でハイジにガミガミ言ってたあの女の方です。

もうお亡くなりになりましたが、生前、僕が店の前に貼りだした、
「本日休業」
の文字を見て、
「これ、ひろし君ですね」
と笑っていたそうです。母が何かのついでに思い出してました。

僕が実際に通っていたのは中学の一年生までで、
実質、二年くらいお世話になったと思うのですが、
この時期に基本を叩き込んだおかげか、不格好なりに読める字にはなったはずです。
たぶん、絵画教室に通ったことよりも、書道教室に通ったことのほうが、
絵を描くときの発想の元になっているかもしれない。

余白を生かすとか、白い半紙も文字の一部であるみたいな感覚は、
たぶん、ここで覚えたのだと思います。
原稿用紙にコマを切って、そこにどうやって人物を配置するか、
どうすればうれしい感じがするか、また、悲しい感じがするかとか、
そういう面白さは、やっぱり書道に通じるものがあるんでしょうね。

まあ、偉そうなことを言っても、
実際は学校で覚えた卑猥な歌を歌って怒られたり、
独り言を言うクセを矯正されたり、
いかにも子供っぽい思い出が多いんですけどね。

一番記憶に焼き付いているのは、小6の卒業制作で、
「顔真卿をやりなさい」
と言われ、中国の武人書道家の文字をさんざん叩きこまれたことです。
書道の基本といえば、王羲之ですが、
顔真卿は王羲之よりも力強い感じで、僕はこれがなんとなく気に入った。
後年、台湾の故宮博物館で実物にお目にかかって、ちょっとうれしかったです。

「開」という一文字を何度も書いたのですが、
そのうち、何かの拍子にとてもカッコいい「門」が書けてしまった。
これは、なんとしてもモノにしなくてはならないと思った僕は、
ものすごく緊張しながら鳥居を書いたのですが、
これが見事に失敗した。
めっちゃ悔しかった。

ところが、先生はこれを見るととても喜んで、
「とてもいい字です」
と僕のことを褒めてくれた。
狐につままれたような気分になりました。

普段厳しくて、おっかない先生が突然べた褒めを始めると、さすがに薄気味悪く、
何か裏があるんじゃないかと思ったのですが、
他の生徒にも、「かわすみ君はこんないい字を書いたのだから君も頑張りなさい!」
なんて言ってるから、本当に訳がわからない。

後ほど、名古屋市の書道家の集まりで披露したそうで、
「みんな褒めてましたよ」
と満面の笑みで言われて、
こちらとしてはお追従で笑うしかなかった。

セロ弾きのゴーシュで、ゴーシュが拍手喝さいを浴びて、
「馬鹿にしてやがる」
と困惑する場面がありますが、
ちょうどあんな気分です。絶対なにか勘違いしてると思った。

そのとき書いた「開」の字は、きれいに表装され、
今はうちの仕事場の僕の机の前に飾られています。
これが、何度見てもいい字には思えないんだよな。
むしろ、門の下の部分を「失敗した!」と思った記憶が蘇ってきて、
「物事は最後まで気を抜いてはいけない」
という教訓になっていたりします。

この額は二十五年ほど実家の店に飾られ、煙草のヤニにまみれていたのですが、
これを見た初老のお客さんが
「漫画みたいな文字だな」
と感想を述べたそうです。
案外、上手な文字じゃないところが、先生方に受けたのかもしれません。

まったく画材の話になっていませんが、まあ、どこかに残しておきたかった、
瀬古先生の思い出話なのです。

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