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2016年8月 7日 (日)

ツッパリ気分でロッケンロール!

自分が学生時代を送った1970年代から80年代にかけては、
いわゆる「ツッパリ」が一世を風靡していた。
小学生時代は短パンに白のソックスだった同級生が、
やおら髪形をリーゼントにとがらせ、制服は長ランにボンタン、
その制服をめくれば裏地は昇竜の刺繍入りだったりした。

あれはなんだったんだろうな。
行き場のない青春のリビドーがバイオレンスな衝動へと向かったのだろうか。

自分はまじめだけが取り柄の学生だったので、
学ランはノーマルな詰襟で、白いカラーをつけていた。
そういえばこのカラーもツッパリさんたちははずしていたな。

その、まじめだけが取り柄の自分も、刺繍入りの学ランにはちょっと憧れた。
ズボンのポケットに手を突っ込んで颯爽と歩くと、
チラチラと長ランの刺繍が見える。
赤とか金色とか、なかなかに綺麗である。
江戸の火消しのいなせな半纏に通じるものがある、というか元祖はそれだろう。
シックな黒の制服にど派手な刺繍の裏地はなかなかに粋である。
自分もお小遣いがあったらやってみたかった。

で、そんなツッパリな方々も、自分の知る限りはそこまでバイオレンスではない。
せいぜい学校の廊下の天井をほうきでつついて破りまくるくらいである。
自分が住んでいた名古屋の千種区はわりと治安のいい地域で、
いくら荒れたくても荒れようがない。

でも全国的には「荒廃する学校」とか騒がれていた時代だし、
それを矯正する「戸塚ヨットスクール」なんて施設がテレビでよく取り上げられていた。
たぶん僕の知らないところではビーバップな荒くれ学園生活が行われていたのだろう。

自分はとにかく大人しくてまじめな「よゐこ」だったので、
不良グループの抗争とやらに巻き込まれる劇的な青春時代は送っていない。
ただ、目はつけられた。
放課後に渡り廊下で雑巾を使った野球みたいなのを楽しんでいると、

「またかわすみ軍団が群れてやがる」

とガンをつけられた。今でいうオタク連中で集まっていたのだけど、
それがなぜ「かわすみ軍団」などと自分の名前で呼ばれていたのか謎である。
そういえばいきなり取り押さえられて首筋にマジックで落書きされたことがあった。

「先生に言いつけてやる!」

と、まっすぐ職員室に告げ口しに行った自分は、なんかイケてないな。
でもまあ、顔に落書きされなかっただけ、ツッパリ君たちも紳士的だった。
どこか牧歌的な遊びの延長みたいな気分があったんだと思う。

本物のツッパリは、たぶんもっと怖い。

僕は高校は普通の公立校だったのだけど、名古屋の果てだったのでバス通学だった。
そのバスの路線にはちょっと柄の悪い男子校があって、帰宅時などよく一緒になった。

中学時代のツッパリ君たちが泣いて逃げ出す本格的なアウトロー連中である。
人間の性質は確実に表情に出る。
目つきが狂犬みたいで触るものみな傷つけそうな物騒なオーラを全身から漂わせている。

で、普通科高校の自分は帰宅時にはたいてい一人だったのだけど、
一度同じ高校の見知らぬ女の子が同じバスに乗ってきたことがあった。
普段は電車通学だけど、たまには気分転換にバスでも乗ってみようかしら、
みたいな軽い気持ちだったんだろう。

同じ高校の制服の僕を見ると、少し離れた座席に腰を下ろした。
まあ、普通そうだわな。
小柄で小鹿みたいにかわいらしい女の子である。たぶんブレザーか何かじゃなかったかな。
うちの高校の取り柄は女子生徒のブレザーがなかなかにかわいいところにある。
男子は黒の詰襟だったけど、女子の制服には全振りで力を注ぐ。あっぱれ学校関係者。

で、途中の停車場からゾロゾロと青い詰襟の男子高生が大量に乗り込んでくるわけだ。
「おっ、今日はかわいい女の子がいるじゃねぇか」
ってんで、彼女の座席の周りに野郎連中が集まってくる。
「ああ、ご愁傷さま」
と自分は見て見ない振りをしていた。世の中は漫画みたいには進まない。
名前も知らない女の子を助けてあげられる腕力も甲斐性も自分は持ち合わせていない。
まあ、連中も直接手を出したりはしないだろうから、大人しくうつむいたまま、
今日は天中殺だと思って耐え抜いておくれよと、他人事のように考えた。

そう、この時点までは他人事だったのだ。
彼女がやおら席を立って自分のすぐ隣にピッタリくっついてくるまでは。

柄の悪い男子高生が満載のバスの中で、
普通科生の自分が女の子と一緒の席に座るとどうなるか、つまり、こうなる。

「先輩、あの野郎、ちょっと生意気っすね」

「あいつとタイマンしたらイチコロっすね」

「ちょっとガタイはいいけど、瞬殺だな」

なんか、目つきの悪い連中が僕にガンつけて煽りはじめた。
髪はリーゼントで眉毛も剃ってる。おいおい、なんでこうなる。
女の子はうつむいたまま、隣の席でブルブルと震えている。
女の子に密着されてこれほどうれしくなかったことはない。
この子は露骨に僕を防波堤代わりに利用しているのだ。

「私に手を出すなら、どうぞこいつを倒してからにしてください」

まあ、か弱い女の子が自分の身を守るという点では最善の策には違いないのだけど、
この防波堤はバイオレンスな展開には向いていないのですよ。

刺々しい空気がバスの中に充満する。
どれだけの時間を耐え抜いたか、やがてバスが停留所に停車すると、
女の子は一目散に扉へと走り、哀れな僕を残してバスを降りてしまった。
鍋屋上野浄水場の前だったかな、浄水場に何か用事があるわけもなく、
危険地帯から逃げ出した、というのが正しいのだろう。

残された僕はたまったもんじゃない。

男子高生の負のエナジーは共学校のロン毛野郎に八つ当たり的に集まってくる。
ネチネチとした視線にさんざん煽られまくった末に、
ようやくにしていつもの停車所に到着した。

生きた心地がしなかった。あと女はえげつないと心から思った。正しい判断なんだけど。

そんなツッパリ兄ちゃんたちもいつの間にか絶滅危惧種になってしまった。
その往年の雄姿を拝めるのはテレビの中か漫画の中くらいで、
今のとんがってる学生さん達はスタイリッシュでオシャレな外見になっている。

髪にパーマをあてたスケバンが自転車のチェーンを振り回したりもしないし、
ラジカセを中心に踊り狂う竹の子族も原宿にはいない。

三原じゅん子は立派な政治家になった。

かつてのヤングマガジン誌が煽りまくったアウトローな若者たちも、
前髪が薄くなってもうリーゼントにするだけのボリュウームが残っていない。
シャコタンに蛍ライトで違法改造のハの字タイヤで駆け回る燃費の悪い連中もいない。

絵にかいたような「悪」が時代遅れになったのは、たぶん、
本当の悪がオシャレでスタイリッシュであることを、
みんなが漠然と感じているからなのだろう。
田中角栄が書籍で再評価されているのもそう、
みんなああいう絵に描いたような「昭和のワル」にノスタルジーを感じているに違いない。

悪い奴になりきるのが難しい世の中になってきているのだろう。

※昔書いた落書きを取り上げてみた。

追記 2016・8・7

高校時代に中学で目をつけられていたツッパリさんと道でばったり出くわしたことがある。
背の高い、仲村トオルをさらにゴツくした感じの人で、
中学時代は校内のツッパリの頂点に君臨していらしたようなお方だ。
夕暮れ時だったかな。
「おう、久しぶり」
とあちらから声をかけてくださった。
中学時代は隣のクラスで、僕が体育の着替えで友達のメガネを跳ね飛ばしてしまったとき、
「またおまえか」
とものすごい目で凄まれたことがある。
ちょっとじゃれてただけなんだけど、僕はどうも空気の読めない大馬鹿野郎と思われていたから、
「いい加減にしとかないとしばくぞ」
という警告だったんだと思う。
中学卒業後は就職したんじゃなかったかな。
「高校はどうだ」
と親し気に話をふってくださって、僕はあれこれお話をさせていただいた。
なんか、丁寧語になってしまうのは、あちらが二回りくらい体が大きくて喧嘩が強いというのもあるけど、
一足先に社会に出られて、大人の風格みたいなものを醸し出していたからだ。
鋭い目つきにも、心なしかやさしくなったように感じた。
「元気で頑張れよ」
と、かつてのリーゼントのツッパリさんは笑顔で立ち去って行った。

あの時は半分怯えきっていたんだけど、
今になって思い返すと、もっと親しく話しておけばよかったと、
ちょっと後悔している。
高校に上がってからはひどいいじめを目にすることもあったので、
ああいう「番長」みたいなのが、少し懐かしいと感じたりもするのだ。
ツッパリを美化しすぎなのかもしれないけど

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