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2016年9月25日 (日)

画竜点睛

●画竜点睛

画家が竜の絵を描きまして、最後に渾身の気合を込めて黒目を書き込む。
するとあら不思議、竜の絵に魂が入って生き生きとし始めましたよ、の意味。

転じて、あらゆる仕事の仕上げに肝となるワンポイントを付け加えること。
ショートケーキにイチゴを乗っけたり、
日航機の垂直尾翼に鶴のマークを貼り付けたり、
和室の大掃除をして、最後に床の間に生け花を置いてみたり、
……
逆に
「画竜点睛を欠く」
となると、仕事自体はそつなく出来上がっているのに、何かが足りない、
あとちょっとなんだけど、なんか惜しい、みたいな意味でも使われます。
イチゴの乗ってないプレーンなショートケーキとか、
JALマークのない日航機、
綺麗なんだけど殺風景な和室
……

ネット上で「ガラスの仮面」のキャラクターが白目を剥いているのが広まって、
ついに本家までそれを宣伝に使うようになっていますが、
美内先生は何ゆえにあんな表現を思いつかれたのか、ときどきぼんやり考えたりします。
あまりのショックに魂が吹き飛んでしまった表現としては、なかなかに秀逸。
画竜点睛を欠いているわけですから、まさに魂の吹き飛んだ状態の絵なわけです。

005
ネット上から勝手に拝借してきました。驚愕の北島マヤ。

ひょっとして美内先生はペン入れで最後に黒目を入れるタイプの漫画家で、
ペン入れ中に
「ここで黒目を入れなかったらショッキングな絵になるわ!」
と思いつかれたのかもしれない。

絵を描かない方にはピンと来ない話かもしれませんが、
割とリアルな絵を描こうとすると、黒目は最後に入れた方が「生きてる感じ」がします。
僕は黒目は最初に入れてしまう派なんですけど、
理屈的に前者の方が圧倒的に正しいな、というのは何となく感じているのです。
まさに「画竜点睛」、魂は最後に渾身の気合を入れて書き込むのです。

でも、本当にそうなんでしょうか。

自分は、目から作画を開始するタイプの絵描き屋さんなので、
最初にいい感じの目を描いて、そこから鼻、口、輪郭、髪の毛、体と作画を進めます。
この描き方だと目が印象的になる、ってことを経験的に知っているからです。

……今現在はもっと複雑な描き方になっているけど、
割と最近まで、目から描き始める描き方を忠実に守っています。というか、
それ以外のやり方をすると、絵が崩壊してしまう。
体を最初に描いて「画竜点睛!」とかやると、視線のあやしいおかしな人物になる。

美内先生風のびっくり顔を描いて、最後に黒目を入れる、というのもやってみました。
これも、僕だとなんか上手くいかない。
「画竜点睛」って、あれは出鱈目なんじゃないかい、ただ「画竜点睛」言いたいだけちゃうん?と、
四字熟語に似非関西弁で文句を垂れ始める始末です。

僕なりの結論から言うと、「画竜点睛」は正しい作画指南の言葉です。
いろいろ試してみた結果、条件付きでこの作画方法が成立することがわかりました。
すなわち、

「丸が綺麗に描けること」

筆記具でパッと○を描いて、それがコンパスで引いたみたいに綺麗な真円なら、
そこにポンと筆を落とすと、中心に筆は落ちます。ある程度作画経験のある人なら
そうなる。
たぶん、そうなるんじゃないかなぁ。
いびつな○だと中心が明後日の方向にすっ飛んでしまっているので、
極端な話、中心が円の外に飛び出すことだってあります。
「画竜点睛」は、目を描きいれるまでの、竜の体の作画が「綺麗な真円」だから、
最後の竜の目が生きるのだと、僕は考えます。
いくらきれいな和室でも、掃除の仕方が独特過ぎると床の間の花が生きない。
「綺麗に整頓はされているけど、こんな本ばかり積み上げられた部屋じゃ花は似合わない」
となるわけです。
大師匠のお描きになった竜の絵は、その体を描いた線が、忠実に円を描いている、
だから、最後に黒目を描きいれることで、そのすべての線がその一点に向かって収束する。
「まるで魂が込められたように」絵が生きてくるわけです。

「竜の体が忠実な円て、どういう意味だよ」
と突っ込まれそうですが、これをどう表現したらいいものか、
ぶっちゃけ、「デッサンがきちんと出来ている」ということなのですが、
自分はその方面ではダメダメな人なので、上手く表現することが出来ない。

最近の自分は、どんな線であれ、それが立体物の輪郭をどうなぞっているのか、
かなり意識して描いています。背広をペン入れするときは、
その襟が立体物であることを意識して、その外側をなぞる感じでペン入れしています。
紙はできるだけ回転はさせない。
時計に例えると、六時から九時、一二時の線は普通に引けるのですが、
お昼を回って三時四時になってくると、中心が内側に入って来るので、
体の向きを少し横にずらします。
五時、六時のあたりの線は、少しだけ紙を回転させ、
なるべく円の中心から外側の線を引く、というルールを守って、線を引きます。
だから背広の左の裾、紙面上の右下のラインを引くときは、少し体をひねっている。

P1100743
葛飾北斎師匠の「略画早指南」より。
これは毛筆で曲線を描くときの筆の握り方についての解説。
「右へ引く線かくのごとし、左へ引く線かくこのごとし」
右ページの左下に「すべて筆と書き手との間……」とあって、面白そうなんだけど、
僕の読解力じゃこれ以上は読めない。

自分のペン入れが駄目だったのは、
この最後の五時六時のラインを時計の外側から引いていたからだと思います。
ここでペン入れが崩壊して絵が無秩序になっている。

……ようは、ペン入れの上手い下手は、物体を正確に認識してペン入れしているかどうか、
だと思うのです。
出来る人はペンを握って次の瞬間には完全なペン入れが出来ている。
出来ない人は、たぶん文字を書くような感じでペン入れしているから、
線それ自体が記号になって、なんだかうるさい感じの絵になる。
線は、あくまで物体を浮き上がらせるための手段です。
上手な人の線がしびれるくらい流麗なのは、その線が
「物体を浮き上がらせる」という目的に徹しているからです。
物体の外側をなぞっているのだから、定規を使ったようにブレのないきれいな曲線が引けるのであって、
それ以上でもそれ以下でもない。
いくら線の流麗さを真似しようとしても、それが目的になってしまうと、
ただの曲線しか引けない結果になる。
大切なのは、物体をはっきりとイメージして、それを円で包み込む感じでペン入れすること、
なんじゃないかなと僕は考えるのですよ。

……なんで絵の描き方でこんなに熱くなっているんだか。

で、自分は目から絵を描くタイプの人なんだけど、
これの欠点は、目がちゃんと描けていないと、そのあとの体の線までいびつになっていく、
ということが一番大きい。
逆に言うと、目がしっかり立体を意識した完璧なものであれば、
そのあとの部品も目のいびつさに引きずられることなく、きちんと正確に描けるということです。

自分は何十年も絵を描き続けてきて、最近になってようやく糸口がつかめてきたという、
遅すぎる人、なのですが、
若い人でこれから上手い絵を描きたいという途方もない願望を抱いている人に、
少しでもヒントになればと、思っていることを書き綴ってみました。
「画竜点睛」は最後の一点で絵に魂を込めるという意味ではなく、
そこに至るまでの過程があって初めて成立する話だ、ということです。

絵の話は書いてる方はノリノリで語ってしまうので、もうしばらく続くかもしれません。

P1100740
北斎の「風流おどけ百句」より「孕んだ男」
「孕んだ男とかけて、落ちた青梅ととく、心は、うむことがない」(ならぬ?)
だと思う。こういうのがもっとスラスラ読めたら楽しいんだろうな。
北斎の線はこの道の達人だけあって正確でするどい。この線を見てるだけでご飯三杯いけます。

追記)
記事をアップしてから、上の絵の意味がなんだか気になっていろいろ調べてみた。
目の前に置かれた米とかつお節らしきものはいったい何なのか。
これに梅干を加えると、何かが「熟む」のだろうか。
米が日本酒なら、江戸時代の「煎り酒」という調味料を作りたかったのに、
孕み男を連れてきてどうするんだい、みたいな意味なんだろうけど、何か、江戸の特殊な風俗なんだろうか。
(どうでもいいけど、梅とかつお節を日本酒で煮込んだ調味料ってなんかおいしそうだ)
坊主が頭を掻いているのは、女人禁制のお寺で寺内の小僧に手を出して孕ませた、の意味。
案外、米を炊くのに鰹節と梅干を入れて炊くとおいしいかやくご飯ができる、くらいの意味なんだろうな。
それなのにこの糞坊主が孕み男なんて連れてきやがった、産めねえよ、
落ちた青梅でおいしいかやくご飯が作れないみたいに、孕んだ男じゃ子供は産めねぇんだよ、
って意味なのかな。

上の絵で一番面白いのはポッコリ膨らんだ小僧のおなかの表現。
北斎のラインが生み出すお腹のポッコリ感は、妖艶にして生々しい。
肉のダボついた感じがよく出てる。
あと、着物の上からでもわかるオバちゃんの骨ばった体つき。
こういうものが表現できてしまうのだから、筆の絵ってすごいなとホトホト見惚れてしまうのです。

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