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2016年10月 6日 (木)

秘伝の技


10月の気候の不安定なこの時期、とかく体調は崩しやすいもの。
かく言う自分も風邪をひきまして、咳が止まらない。
咳が止まらない中、煙草なんかをふかしていると、
むかし先輩で喘息もちなのにひたすらスパスパやってる人がいたな、
難波さんは元気かなと、学生時代のことなどを回想したりします。スパスパ。

風邪のひき始めの時によくやる秘伝の技があって、
軽いものならこれで抑えることが出来る、らしい。
それを実行に移してみたりするのだけど、
その詳しい内容をここに書くことはできない。

「絶対、他の人に言っちゃ駄目だよ」

と釘を刺されているからだ。
教えてくれたのは子供の頃、近所の小さな神社にいた神主さんで、
いつも高齢の母親様の後ろにつき従う、従者のようなイメージが僕にはある。

明治生まれの母親様は、小柄だけど少しおっかない感じがした。
その息子の従者さんはあらゆる宗教や民間伝承などにも精通しているらしく、
自分ちの食堂にいらっしゃったときなど、僕や弟たちを相手にいろんな話をしてくれた。
民間療法みたいなものも教わっているのだけど、

●「風邪のひき始めを抑える術」
●「肩の凝りを指先に下して、そこからスポンと抜き取る術」
●「ハゲを100パーセント予防する術」
●「蓄膿症を改善する術」

なんかは今でもはっきり思い出すことが出来る。
冬のストーブの前でいろいろ実行してみせては、
「他の人に教えちゃ駄目だよ、間違ったやり方をすると逆効果だからね」
と釘を刺すのだけど、
だったらなんで僕に教えちゃうのかなと、子供ごころにも不思議に思っていた。

きっと誰かに教えたくて仕方がなかったのだろう。
その方は以前は結婚もしていらして、お子さんもいたらしいのだけど、
例の厳格な母親様が別れさせた、というのは後になって知ったことだ。
「修行の邪魔だ」
とか、そんな理由だったらしい。

「蓄膿症を改善する術」はどうやら効果はあったらしい。
そういえば子供の頃は蓄膿症だったと、今頃になって思い出すくらいだ。
「肩こりを指先から抜き取る」は、肩から腕の方にもみほぐしていき、
最後に指先をつまんで、

「プチン」

と音をさせると、肩こりが嘘のように抜けていった。
ちょっと痛いけど、「プチン」と抜ける感覚はなかなか面白かった。
整体師にでもなれば千客万来で大繁盛したに違いない。

教わった術の中でいまだに実行しているのは「風邪のひき始めを抑える術」で、
さっきからここにその詳細を書きたくて仕方がないのだけど、
一つ間違えると命の危険のあることなので、やっぱり書けない。
せっかく読んでやってるのになんだよそれ!と不快に思われるかもしれないけど、
人との約束は守らなければならない。
僕だって半信半疑で実行しているのだ。他人がやって上手くいくとは思えない。

「ハゲを100パーセント予防する術」はとても魅力的だった。
その神主の人は年齢の割に髪が黒々と豊かに生えていらしたので、
なんだかものすごく説得力があった。
「今のうちからこれを毎日やっておけば、歳をとってもハゲないからね」
と、頭にポンポンとある秘術を施して見せた。

「そうか、これで将来は万全だな!」

と、その時は思ったのだけど、
今になってみるとそんなマメなことをズボラな僕が出来るわきゃない。
毎朝カガミの中の薄毛オヤジを見るたび、あの教えを守っていたらなと、
ちょいとばかり悔しい思いをしている。

考えてみると、薄毛を見るたびあの神主さんを思い出すのだから、
「自分の記憶を後世に伝える」という意味では、成功しているのかもしれない。
僕はあの神主さんのことを四六時中、それこそカガミを覗くたびに思い出しているのだ。
そういうことを仕出かしそうな、不思議な雰囲気のある人だった。。

厳格な母親様が高齢で大往生なされると、その神主さんは旅に出た。
「母親そっくりの地蔵菩薩を探し出すのです」
と、あるのかどうかもわからない菩薩探しの旅だったらしい。
それで半年か一年か、その方は実家の食堂に現れなくなった。
地蔵菩薩を見つけいったいどうするのか、
それを譲り受けて小さな神社に飾るのか、
ってか、神社にお地蔵様を飾るのって、ものすごく間違ってないかと、
いろいろ突っ込むポイントはあったのだけど、
まあ、宗教を超越していらした方なので、どうだっていいことなのかもしれない。
あの厳格な母親の化身の石像を探し求める、そこが重要だったのだろう。

その地蔵菩薩が見つかったのかどうか、僕は寡聞にして知らない。

先日、名古屋の母親に「あの神主さんはどうしてるんだ」と聞いてみたら、
「とっくの昔に亡くなってるよ」
と教えられた。
母親にとってあの男性はしょっちゅう店に現れて何時間もくつろぐ困った人だったので、
ちょいとばかり言葉に棘があったけど、
「道にうずくまっているところを通行人に発見されてね」
と、そこで言葉を切った。身近な人間の死にざまの話はくどくどするものではない。
あんな変わった人でもうちのお客様だったんだからね、と。

アツアツのお風呂につかって教えられた秘術を実行しながら、
「あの人は本当に不思議な人だったな」と、
しみじみ思い出にふけるのだ。
こうやって食堂のガキんちょに思い出されることが、たぶんあの方の一番の目的だったと、
なんとなくそんな気がするから。

とりあえず咳は収まったので明け方までかかって原稿の仕上げを続けた。
明日が締め切りなのだ。
たぶん今月末にぶんか社さんの方で掲載になるはずです。
て、なんでそんなときにブログ記事を書いてるかな。

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