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2016年12月 7日 (水)

八つ墓村2


自分はどうも、笑いのツボが人とは微妙に違っているらしく、
一緒に映画を観たりすると、おかしなところで笑い出したりするので、
よく迷惑がられたりする。

そんな自分の読書感想文。

結局、横溝正史の「八つ墓村」を定価で本屋さんで買ってきたのだ。
作者様への墓前の線香代くらいにはなるのかな。
とても楽しませていただいたので、なにか作者様にお礼を言いたい気分だ。

映画の渥美清版を観て、原作を読んでみたくなったことは前回のブログで書いた。
僕は推理小説というのはほとんど読まない。
学生時代にシャーロックホームズは全部読んだと思うけど、
あれも推理ものとしては読んでいなかったと思う。
ホームズとワトソンの探偵コンビが好きだったのだ。

たぶん、頭をフル回転させて読む系の小説が苦手なのだろう。
ページの向こうで作者様が「君にこの謎がわかるかね?」と挑発してくる作品を読むと、
「もったいぶってないでとっとと教えろよ」
と、どうしても思ってしまう。気が短いのだ。高血圧だし。

読者様に「先がもっと読みたい」と考えていただくために、創作者はいろいろ苦心する。
推理小説は「謎」をことさらに強調して、読者様を惹きつける。
だから、下手な推理小説だと犯人が分かった時に「なんじゃそりゃ!」と激怒する。
謎への期待が大きかった分だけ、謎が陳腐だと安手の詐欺師に騙された気分になるのだ。

その点「八つ墓村」のトリックは、77年版映画ではほとんど省かれているけれど、
自分は「なるほど」と思ったし、ラスト後に作者様と語り合いたくなるくらい、
心地よい終わり方だった。

でも自分は推理小説としては読んでいなくて、むしろ主人公の「冒険物語」として、
楽しんだような気もする。僕は今回横溝正史作品を初めて読んだので、
読む前はもっとドロドロした怪異物語だと勝手に思い込んでいたから、、
その文体の明るさとはっちゃけ具合にかなり驚かされた。
「推理作家とその読者に悪い人はいない」みたいな一文で「おいおい」と思った。
なんかずいぶんお茶目な作家さんだ。

映画で美しく映像化された鍾乳洞の描写も、
原作では「そんな奇麗なもんじゃないよ」とはっきり断言されていて、
作者様の飄々としたパーソナリティに突っ込みが追い付かない。
そのくせ鍾乳洞の神秘的な舞台設定は縦横に駆使されているのだ。
「いやいや、作者様は鍾乳洞の美しさをちゃんとわかってますよね?」
と声をかけても、その作者様はのほほんと洞窟の先に進んでしまう。
冒険大好きのやんちゃな少年みたいだ。
「陰惨な殺人事件を描くミステリアスな推理作家」のイメージはない。

第五章まで読み進めて、第六章のタイトルが「春代の激情」だったときは、
「おっさん!」
と思わず声に出して笑ってしまった。何がツボったのか、ほとんど理解不能。
女性を描写するときの容赦ないブラックさは個人的にかなり好きだったりする。

こういう明るいパーソナリティは映像作品ではバッサリ切り落とされる。
殺人事件の猟奇性とオドロオドロしい不気味さが強調されて、別の作品になる。
僕は原作を読んで、これは背筋も凍る犯罪ファイルではなくて、
スディーブンソンの「宝島」だと思った。
で、その冒険活劇具合がものすごく気に入ってしまったのだ。

そして、その作品から猟奇性とミステリーの空気をピックアップしたのが、
七十年代の映像作家たちなのだろうなと考えた。
薄暗い闇のなかで光る犯罪者の倒錯した視線、恐怖と戦慄、それらは映像として、
刺激的に再構成されたものだ。
逆に、その後のミステリー小説のほうが、映像のイメージを取り込んでいる気もする。
犯罪者はより倒錯的に、怪しさを増幅されていく。
ほとんど人知を超越した異界の存在へと変貌していく。

その怪異的イメージは強烈で、犯罪という非日常が醸し出す妖しい空気は、
本屋のミステリーコーナーでうず高くとぐろを巻いていたりする。
読者はその「禁断」の空気に惹きつけられ、ミステリー小説を手にするのかもしれない。
僕は読まないからよくわからないけど、たぶんそうなのだろう。

そういうミステリーのイメージを作った業界関係者の手腕というのはすごいなと、
映画と原作の「八つ墓村」を比較して、僕は思ったのでした。
どちらも優れた作品なのだけど、面白さのベクトルはまったく違っている。
普段ミステリー小説を読まない自分には原作作者様のミステリアスでないところが、
ものすごく面白かったのでした。

昭和のミステリー小説が明るく明快だと感じてしまうのは、
平成という時代が暗くて必要以上に複雑だからなのかもしれないけど。

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