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2017年2月16日 (木)

哀愁の膝カックン

部屋の掃除をしていたら、古いバインダーが出てきた。
20代の頃気になったことをいろいろ書き記したもので
その中に、以前このブログで紹介した

小栗虫太郎著「黒死館殺人事件」

に関するものもあった。
この本に関する思い出をもう一度書き記してみると、

……二十代のかわすみ青年はバイトの休みにコインランドリーで洗濯をしていた。
そこにぶらりと現れた「〇×ツクル」と名乗る老人が、読書中のかわすみに声をかけ、
「本がお好きなら、推理作家の小栗虫太郎はご存知ですか」
と、聞いたこともない作家の話を滔滔と語り始めた。
代表作は日本の三大奇書の一つと賞される「黒死館殺人事件」だという。

それで興味を持った自分は小岩の図書館で借りてきたのだけど、第一章で頓挫した。
言葉遣いがやたらめっぽう難解だったのだ。
あんまり難解だったんで、20代の自分はわからない言葉を抜き書きしていた。

今回見つかったのはその抜き書きしたルーズリーフである。
面白い部分をここに書いてみると、

「儂は虚妄の狼煙には驚かんて」

というセリフがある。「虚妄」と書いて「うそ」と読ませる。
お爺さんがあやしい笑いを浮かべながら、
「ワシは嘘のノロシには驚かんて、ひっひっひっ」
と勝ち誇っている顔を想像すると、意味は分からんがすごい昭和だなって感じがする。

「破邪顕正の眼」

これは今ならわかるのだけど、20代の自分にはチンプンカンプンだった。
正義の味方が一瞥を食らわせただけで、相手の悪行は白日の下にさらされるのだ。
昭和のヒーローにはみんなこの能力があって、時に目からビームとなって発射される。

他にも、「余剰推理」「湖面梵相」「盤根錯綜」なんて言葉が抜き書きされている。
こんなのの連続攻撃を食らったら、さすがに読むのを躊躇してしまう。
ただでさえ漢字は苦手なのに。

で、以前にブログで書いた「膝膕窩」も抜き書きされていた。
「ひかがみ」である。膝の裏のくぼみのことで、
この言葉の雅な響きに魅せられた自分は、普通にこの言葉を日常で使うようになった。

「あのお姉ちゃんのヒカガミ、めっちゃエロいよね」

みたいな使い方をする。腋の下と同じで、皮膚の薄い敏感な部分はフェチの扇情心を煽る。
煽るんじゃないかな。なんか特殊すぎるような気がしてきた。
でも、こんな雅な言葉を死語の世界に追いやってしまうのはもったいないと思い、
おじさんは日常的に使っているのです。

で、この言葉が「黒死館殺人事件」に出てきたのは探偵の推理か何かで、
いわゆる「膝カックン」についての説明で使われていたのだと思う。
もちろん、昭和初期に「膝カックン」なんて言葉は存在しないので、
その説明は優美にして高尚、典雅な趣を漂わせることとなる。
たかが「膝カックン」のくせに。

「そこで何者かが被害者の膝膕窩を後ろから膝で打ち、〇×反応で転倒させたのである」

みたいな文章だったと思う。この、〇×反応のところが自分の記憶になかったので、
ネットで調べてみたのだけど、結局わからず、
「エントレランス反応とか、そんな感じじゃなかったかな」
といい加減な言葉をこのブログに載せたのだけど、それも抜き書きされていた。

「イエンドラシック反応」である。
微妙に間違っていた。
その解説として本文を抜き書きした解説文によると、

「膝膕窩に加えられた衝撃が上腕筋に伝導して反射運動を起こし、無意識裡に両腕を水平に上げる」

となっている。「膝カックン」を食らって思わず万歳してしまった状態なのだろう。
もし「イエンドラシック反応」という言葉が日本語に定着していたならば、
きっと「膝カックン」はもう少しカッコいいイメージになっていたんだろうな。

中学の時、クラスの小嶋くんという背の高い男子生徒が、
やたら僕の「イエンドラシック反応」を引き出して楽しんでいた。
中学の三年間、友達と話し込んでるときとか、朝の朝礼、
修学旅行のときにもやられたような気がする。

「しししし、驚いてやんの」
と、ものすごくご満悦の表情だった。

彼はそこそこのイケメンで、クラスでも人望はあった方だと思う。
割と真面目で成績もそこそこよかったはずだ。
とても「膝カックン」なんて悪戯をしそうにないタイプなのだけど、
もうあれだな、かわすみを見ると「膝カックンせざるを得ない病気」だったのだろう。
別に仲が悪かったわけでもないので、親愛の表現だったと僕は思っている。

で、その彼と二十歳の成人式で再会しているのだけど、
その時も僕に「膝カックン」を食らわして、
「しししし、やっぱり驚いてやんの」
って感じだった。
振り返ると背広姿の小嶋君が無邪気に笑っていた。

その成人式がもう三十年近く前のことだってのは、なかなかに恐ろしいことだ。
つい昨日のことみたいなのに。
あのときみんなで行ったファミレス「デニーズ」で、
「看護婦さんを孕ませちまった」
とぼやいていたK君も、今じゃ三十歳の子持ちなんだろうな。

「膝カックン」の話をすると、歳月の過ぎ去る速さに愕然とする、みたいな話でした。

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