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2017年3月25日 (土)

聖徳太子


聖徳太子か厩戸王か、どちらが歴史的に正しいのかって問題があって、
一時は文部省が「厩戸王」に傾いていたのが、

「いや、聖徳太子でしょうどう考えても!」

という国民の声に押されて、

「やっぱり聖徳太子ですよね(汗)」

と元の表記に落ち着くことになった。まずは目出度い。
親が聖徳太子の話をしていて、子供に「厩戸王だよ、これだから昭和平成生まれは」
といらぬ突っ込みを入れられる心配がなくなった。

聖徳太子といえば、かつては高額紙幣の代名詞で、
昭和世代の中には一万円や五千円札が「聖徳太子」だった方が多い。僕もそうだ。
今は高額紙幣といえば「福沢諭吉」なのだけど、
これも十万円札を発行した場合を考えての「暫定高額紙幣」で、

「十万円札を出す場合を考えて、聖徳太子はとっておこう」

って話だったと思う。
まあ、バブルがはじけていらぬ懸念になってしまったけれど。

子供のころ、食堂によく来るお客さんと歴史談義をしていて、
「名前の残ってるやつで碌な奴はいない」
って話になった。
「ひろし!お前の知ってる偉人で尊敬できるやつを言ってみろ、論破してやる」
とおっしゃるので、

「聖徳太子」

と答えたら、言葉につまって沈黙してしまった。
なにしろ古い時代の人だから、論破しようにも歴史的記述が少なすぎる。
しかも、その残ってる史料が「めっちゃいい人」なのだから議論のしようがない。

「日本は中華文明とは一線を画す」

的な宣言をした人なのだから、日本史的には極めて重要な人物である。

「日出ずる国の天子が日没する国の天子に文を送る。つつがなきや」

だったかな。子供ごごろにも「挑発的だな」とその大胆さに驚いたもんだ。

今回歴史家の方々が問題にしたのは、
「聖徳太子の呼び名は没後百年ほどして確認されるもので、当時はそう呼ばれてなかった」
という点なのだけど、それを言い出したら天皇の名前は全部没後の尊称だよねとか、
いろいろ突っ込みもある。(他に個人を特定する表現がないので仕方ないけど)
歴史家の方々には歴史の厳密性がどうのこうのと言いたいことも多いのだろうけど、
結局歴史は「国民の共通の思い出」なのだから、
1500年以上守られてきた思い出の名前を改変するのは、やっぱりおかしい。
いいじゃん、そんなもん、となる。

歴史の真実なんてものは、時代によって多く変わっていく。
日本は比較的歴史に関する資料が多いお国柄なので、
いろいろな議論が沸き上がるのはとてもありがたい話だ。でも聖徳太子はなあ。

吉村昭さんの歴史エッセイを読んでいると、その執念に驚かされたりする。

「桜田門外の変のとき、雪は何時にやんだのだろう」

ってことをひたすら調査していたりする。
そんなもん、どうだっていいだろうって気もするけど、
主人公の心情を理解するためには、どうしても必要な情報らしい。
井伊直弼の首を取った。主人公は犯行現場から逃走する。
そのとき雪が降っていたのか、やんでいたのか。

そうやっていろいろ調べているうちに、副産物的に他の歴史的事実がわかったりもする。
逃走先の品川の船の中で主人公は家族宛の手紙をしたためているけれど、
その時期が潮干狩りのシーズンで、品川の浜は干上がっていたはずなので、
この「船の中」というのは浜に上がっている船に違いなく、
主人公はそこに身を潜めて事態の進展をうかがっていたのではないか、みたいな。

そのとき、雪はすでにやみ、数刻前の惨劇がうそのように浜は静まり返っていた。

吉村昭さんの歴史小説の迫真性は、その徹底的な調査の結果である。
特に幕末ものだと、
「生き証人がいるうちに調査しておかなくては」
という心理が働くようで、その追及の手はどんどん激しくなる。
結果、派手なエンターテイメントにはならないけれど、リアルな小説になる。
根強いファンがいるのは、そこに魅かれてなのだろう。

だから、一概に「歴史的厳密性を追求するのは愚かなことだ」とも言えない。
でも聖徳太子の名前を変えるのは、やっぱりやりすぎでしょう。
名前を変えたために未来の日本人から忘却される可能性が非常に高い。
「厩戸王」ではインパクトに欠ける。
歴史が国民の共通の思い出であり、未来に伝えていく記憶だってことを考えたなら、
聖徳太子の名前は絶対に変えるべきではないと、僕は思うのだけどなあ。


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