無料ブログはココログ

amazon

  • PCソフト
  • DVDベストセラー
  • ベストセラー
  • ウィジェット

« パワードスーツ | トップページ | 対話篇2~ボスジャンの思い出~ »

2017年9月 4日 (月)

対話篇

 1

師匠「仕事で頑張ったら肩が壊れた」
弟子「大丈夫ですか?なんだかめっちゃ痛そうなんだけど」
師匠「背中が割れるように痛いんだよね。それでもなんとか原稿を上げたんだけど」
弟子「苦労して無理やり女の子の絵を入れてましたね」
師匠「そこはポリシーだから。旅打ち漫画は男臭くなりがちだから強引に描き込んでる」
弟子「肩が痛いのに無理しちゃって」
師匠「頑張ってチャイナドレスの女の子とバニー風の女の子描いたんだけどね」
弟子「バニーガールがパチスロ打っちゃダメでしょ」
師匠「編集とか、怒ってるかもしれないね。健全な誌面を目指してるって言ってたし」
弟子「ダメじゃないですか」
師匠「健全って言われると、なんか抵抗したくなるんだよね。漫画家のサガかな」

弟子「なんでチャイナドレスなんか描いたんです?」
師匠「モブを描きまして」
弟子「ああ、二百人とかさらっと注文来てましたね」
師匠「深夜にパチンコ屋さんの前で並んでるの。それを一日がかりで描きまして」
弟子「笑っちゃうくらい細かく描き込んでますよね」
師匠「朝になって行列が二百人に達したところで、なんか嫌になってきた(笑)」
弟子「それはまあ、仕方がないと思います。写経並みに地味な作業ですから」
師匠「で、ヤケになってどんどんおかしなものを描き始める」
弟子「それでチャイナですか」
師匠「うん、なんか気が付いたらチャイナドレスの女の子を描いてた」
弟子「無意識に描いちゃうんだ」
師匠「けっこういい下描きだったから、そのままペン入れしちゃったの」

師匠「で、いつもは時間経過のコマにお店のお姉さんを描いてるんだけどね」
弟子「ネームではそうなってますね。”特に意味もなくお姉ちゃん”ってやつ」
師匠「ついでだからそこもチャイナにしてね、もう一コマもバニーに変更した」
弟子「担当さん、呆れてるんじゃないですか?」
師匠「かもね」
弟子「でも描いちゃう」
師匠「頭の中に絵が出来てたから、描いちゃった方が早かったんだ」
弟子「絵って、頭の中に出来てるもんなんですか」
師匠「けっこうリアルに想像してるよ。で、それをペンの先でなぞってる」
弟子「写真を見て描いてるのかと思ってました」
師匠「それだと著作権がうるさいから……」

弟子「で、仕事中にバニーガールのことをイメージしていたと」
師匠「若いころによくバニーのお店に連れていってもらったの」
弟子「うわ……」
師匠「銀座の割と高級そうなお店」
弟子「そういう趣味があるなんて知らなかった……」
師匠「担当さんの趣味だね。昭和世代の大御所漫画家さんとご一緒させてもらったの」
弟子「女の子にウサギの格好をさせて服従させる……」
師匠「床に膝をついて水割り作ってくれたね」
弟子「うわ……」
師匠「でもその頃はバニーなんて好きでも何でもなかったんだけどね」
弟子「今は好きなんだ」
師匠「池袋の交差点で信号待ちしてたら自転車に乗ったバニーさんが目の前に現れてね」
弟子「あの格好で自転車乗ってたんですか?
師匠「緊急の買い出しかなんかだったのかな。ウサギの耳をつけたままで」
弟子「なんてか……ある意味カッコいいかもしれませんね」
師匠「サドルの上のお尻に白いしっぽが生えててね。なんかすごくイナセだった」

 2

弟子「今回はまた性懲りもなく音楽の話をするつもりなんですか?」
師匠「肩が壊れて痛いんで、寝転がって音楽ばっかり聴いてるの」
弟子「はたから見るとただの怠け者ですね」
師匠「激痛が走るんだからしょうがない。昨日も病院で血液検査があったんだけど」
弟子「ついでに診てもらえば良かったのに……」
師匠「採血が済んでから腕を上に向けて三分間待つのが苦行だった」
弟子「四十肩のひどい奴なんですね」
師匠「若いお姉さん看護師が見下ろす中、五十男が苦痛に顔をゆがめているという」
弟子「あの女の子もずいぶん採血が上手くなったみたいですね」
師匠「うん、いつもは怖くて見てられないんだけど、肩の方が痛かったんでつい」
弟子「注射針が刺さるところをじっくり観察してしまったと」
師匠「肩の痛みに比べれば、針とかむしろ気持ちがいいじゃないかって」
弟子「そんなに痛いなら病院へ……って病院でしたね、そこ」

師匠「で、普通の聴いても飽きちゃうから、自分で選曲したの聴いてる」
弟子「プレイリストってやつですね。古いロックとかですか」
師匠「それもやってるね。クイーンのブライアン・メイの曲だけ集めてみたりとか」
弟子「クイーンってベスト盤が最高で、アルバムはイマイチってよく言われてました」
師匠「二枚目のQueenⅡは評判いいけど、それ以外は構成がゆるい気がする」
弟子「ジャズってアルバム、大好きですよね」
師匠「一曲目のインパクトと最後の方のDon't stop me nowが大好きだから」
弟子「他のアルバムはあんまり聴かないんですか?」
師匠「いい曲は多いけど、全体として聴くのがつらい感じがする」
弟子「なるほど」
師匠「だからギター中心とか、フレディのボーカル中心とか、まとめた方がいい」


師匠「で、これはクイーンのロックっぽいのをまとめたプレイリスト」
弟子「ウイー・ウイル・ロックユーから始まるんですか。ミーハーですね」
師匠「次でいきなりヘッドロングに飛ぶ。で、次がストーンコールドクレイジー」
弟子「その次がシア・ハートアタックですか」
師匠「テンションがおかしい曲ばっかりが続く」
弟子「でも最後の方がどんどん渋くなってくる。スリープ・オン・サイドウォークとか」
師匠「おしまいはイッツ・ツー・レイト。ここできっぱり終わるのがいい」
弟子「アルバムだとこのあとメランコリーブルースが続きますけど」
師匠「フレディのバラードっぽいので終わるの、あんまり好きじゃないんだ」

弟子「それと同じ選曲をクラシックでもやる」
師匠「モーツァルトの緩徐楽章だけ集めて聴いてるんだ」
弟子「邪道ですね」
師匠「そうかな?」
弟子「交響曲とか、三楽章四楽章で構成されているものを抜き出して聴くのは邪道です」
師匠「頭が固いなぁ」
弟子「ドボルザークの新世界の第四楽章だけ聴きまくるくらい邪道です」
師匠「あそこが一番盛り上がるし、しょうがないじゃん」
弟子「第一楽章からの積み重ねがあって、第四楽章が盛り上がるんです」

師匠「でもモーツァルトくらいだと交響曲も組曲の発展形って感じだし」
弟子「やっぱりばらして聴くんだ……」
師匠「まあ、ちょっとこのプレイリスト見てみ?」
弟子「……いきなり魔笛の’夜の女王のアリア’から始まってるじゃないですか」
師匠「ザラストロをぶっ殺せ」
弟子「純真な若者を戦争へとけしかける邪悪な曲ですね」
師匠「次がレクイエムのディエス・イレ(怒りの日)ピアノ協20番の第一楽章と続く」
弟子「めっちゃ破壊的なモーツァルトだ……」
師匠「グルダのCDだとカデンツァがベートーヴェンでますます破壊的」
弟子「神経が焼き切れますよ」
師匠「次はおなじみ交響曲40番ホ短調の第一楽章」
弟子「ガーディナー指揮で高速演奏なのがまた恐ろしい」
師匠「BGMで聴くにはこれくらい早い方が気持ちいいよね」
弟子「次は?」
師匠「レクイエムの”呪われ退けられし者たちが”」
弟子「映画でモーツァルトが死にそうになってるときにかかる曲ですね」
師匠「アマデウスね。奥さんが湯治場から馬車を走らせて帰ってくるの」
弟子「その次が」
師匠「これもアマデウスつながりで交響曲25番の第一楽章」
弟子「サリエリが自殺未遂した冒頭シーンで流れて有名になった曲」
師匠「僕も高校生の時に映画で観てから好きになったんだ」
弟子「たいへんだーたいへんだーサリエリさんがー死にそうだー」
師匠「変な歌詞をつけないように」

弟子「次はまた超有名曲」
師匠「ピアノ協奏曲23番の第二楽章」
弟子「この流れで聴くと死にそうに暗い曲に思えます」
師匠「23番自体は明るい曲なんだけどね」
弟子「呪われたモーツァルト」
師匠「で、レクイエムのラクリモサ(涙の日)でとどめを刺す」
弟子「神経がもたないです……」
師匠「で、その次が二台のピアノのための協奏曲の最終楽章」
弟子「いきなり超ネアカになった」
師匠「ホルン協奏曲第3番の終楽章」
弟子「どんどんネアカになっていく」
師匠「さんざん地獄を味わった後に仏のモーツァルトがやってくるわけだな」
弟子「次は?」
師匠「ハフナーセレナードのロンド楽章」
弟子「バイオリンが高速で弾きまくるやつですね」
師匠「バイオリニストが必死の形相で弾いてるのを想像すると楽しいよね」
弟子「ネアカもここまで突き抜けると恐怖です」

師匠「次がピアノ協奏曲26番戴冠式の終楽章」
弟子「明るいですね」
師匠「スキップしてるよね、モーツァルト」
弟子「やけくそのようにも聴こえます」
師匠「最後がジュピターの終楽章。交響曲史上、もっとも完璧な締めの曲」
弟子「とうとう天国まですっ飛んでしまった」
師匠「終わりよければすべて良し」
弟子「まあ、あの曲は最終楽章だけ繰り返し聴いても許されるかも」
師匠「昔、画家の東山魁夷のインタビュー番組があってね」
弟子「はい」
師匠「徹夜で富士山の絵を描いてたらBGMがジュピターになった」
弟子「え……日本画家でもBGM流すんだ」
師匠「うん、で、ちょっと煮詰まってたんだけど終楽章が流れる中、アトリエに朝の光が射し込んできてね」
弟子「ほう」
師匠「一気にテンションが上がって絵が仕上がってしまったと」
弟子「なるほど、なんかわかります。富士にはフーガがよく似合う」
師匠「これがもし新世界の終楽章だったら富士山が噴火していたかもしれない」
弟子「……東山魁夷はそんな富士山は描かないと思いますよ」

« パワードスーツ | トップページ | 対話篇2~ボスジャンの思い出~ »

対話篇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1669327/71609032

この記事へのトラックバック一覧です: 対話篇:

« パワードスーツ | トップページ | 対話篇2~ボスジャンの思い出~ »