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書籍・雑誌

2013年11月15日 (金)

三波春夫著 「熱血!日本偉人伝」

「この頃はめっきり古本屋に通わなくなったな」

なんてことを古本屋で本を選びながら思った。
単純に、昔読んだ本を読み返すのが多くなっただけなのだけど。
十代の頃は一冊の本を一日で読み切ったもんだ。
「罪と罰」をノンストップで読み切って、知恵熱が出そうになったっけ。

そのくせ「罪と罰」というと、手塚治虫版のラストシーンが浮かんできたりする。
ラスコーリニコフとソーニャはシベリアで幸せになりましたとさ。
……若い頃は読むスピードは早かったけど、書いてあることはちゃんと読んでなかった。
それで、今頃になってあれこれ引っ張り出してきては読み返している。
まあ、たいていの人がそんなものかもしれないけど、ちょっともったいないことをした。

バルザックは、藤原書店から選集が出たときに買って来ちゃ読んでた。
これは歳をとってからだったので、比較的じっくりと読みこんだ。
特に気に入ったもの、「従兄ポンス」とか「あら皮」とか、
何度か繰り返し読んでいたりする。

「従兄ポンス」は骨董オタクの老人の話で、生涯独身だった老人が親戚に邪険にされ、
それでもコレクター道に邁進する話。
ラストシーンでバルザックの悪魔的な嘲笑を聞くようなカタルシスがあって、
そのシーンだけのために長い作品をひたすら読んだりする。
題材といい、キャラクターといい、とても現代的な感じがする。

「従兄ポンス」が作家の後期の作品であるのに対して、「あら皮」は最初期の作品。
別の筆名で三文小説を書いていた時代のノリで、お話はとても単純。
願い事をかなえるたびに小さくなっていく「あら皮」を手に入れた学生が、
あらゆる願いをかなえる代わりに、自分の寿命をすり減らしていく。
願い事をかなえるたびに「あら皮」は小さく縮んでいくのだけど、
そのからくりに気付いた主人公は、八方手を尽くして迫りくる死に抵抗する。
……まんま「世にも奇妙な物語」の感じがする。ひどく長い作品だけど。

まあ、そんなこんなでいろいろ読み返していると、古本屋にも自然と足が遠のく。
ちょっと前の読売新聞の悩み事相談で、
「本を買って来ちゃ最後まで読まずに積み上げている」ご老人のはなしがあったけれど、
自分に関してはそれはほとんどない。買ってきたら9割方はちゃんと読んでる。
それは、手当たり次第に買い捲る悪癖がないからだろうなと考える。
単純に貧乏性なだけかもしれないけど。

無駄な買い物はしない自分だけれど、
古本屋の棚で三波春夫の本を見つけた瞬間、これは買っておこうと考えた。
ちょっと前にブログで三波春夫の「お客様は神様です」に触れたせいだと思う。
名前を出してしまった以上、読まなきゃいけないという義務感が生まれる。

P1040577

ちなみに、サイン本である。

P1040579

本を買うとき、まとまった種類の古い本がずらっと並んでいると、
この本の前の持ち主が結構なお年寄りで、亡くなってから遺族の方が売りに出したのだと、
いろいろ想像してしまうことがある。
三波春夫のサイン会に出向く年齢層で、本の発売が十年以上も前となれば、
「ああ」
と少し合点がいったような気になる。
それで、不謹慎な想像ではあるけれど、読む方としても本を託されたような、
厳粛な気持ちで読むことになる。
三波春夫ももう亡くなっているわけだし。

この本は、三波春夫の最後の著作である。
癌との闘病生活を続けながら、それでも著作を発表し、サイン会までやったとなれば、
この本には三波春夫の並々ならぬ気持ちが込められているはずで、
実際読んでみると自分の予想はほとんど当たっているかと思われる。

歴史上の偉人の中で、三波春夫が歌ってきた人物が多く選ばれている。
そしてそれは、ただランダムに選ばれたわけではなく、
「私利私欲のためではなく、公のために働いた人物」
を選択していることが読み進めるうちにわかってくる。
セレクトされた人物は次の通り。

●高田屋嘉兵衛
●大石内蔵助
●勝海舟
●平清盛
●二宮尊徳
●児玉源太郎
●織田信長と豊臣秀吉
●聖徳太子
●スサノオと日霊女

歴史書としては、平清盛など、やや贔屓の引き倒しかなと思えるところもあるけれど、
普通の歴史書にはない独自の視点があり、
「日本のために俺がやらなきゃいけないんだ」
という強い意志を全体から感じる。まさに「熱血」。
案外、若い人の方が共感できるかもしれない。

ただ、現在では入手が困難な本であり、お奨めすることは出来ない。残念だけど。
もし古本屋で見かけたなら、手に入れて読んでもらいたいとは思う。
決して損はしない。
日本の心を歌い続けた歌謡界の巨人が、その魂の糧とした歴史上の偉人について、
その人物になり切って語っている。ものすごい説得力がある。

ところで、僕は三波春夫を熱心に聴いたことがない。
自分たちの世代にとっては三波春夫は既に歌謡界の神のような存在で、
同時にパロディの対象でもあった。
「お客様は神様です」
が誤解されたまま広まったのも、お笑い芸人がパロディとして使ったからで、
そういう意味で誤解の多いひとであった。

自慢にならない話だけど、僕は三波春夫というと、

♪俺~はル~パン~だ~ぞ~

という、映画「ルパンVSマモー」のエンディングテーマを思い浮かべてしまう。
三波春夫というキャラクターを最大限に使った見事な起用なのだけど、
これが「熱き心の日本人」三波春夫の真面目な部分をぼかした気も、少しだけする。
ちなみに、ウィキで調べたら、声優としてもエジプト警察の署長役で出演している。

……読み返すと完全に書評になってるな、この文章。